グリム童話から削除された『青髭』がやばい

今回は、グリム童話集2版以降存在しない物語『青髭』をご紹介しよう。

 

これは、何人もの女性たちを自らの手であやめ、自分の家の一室にコレクションしていた猟奇的な男の物語。

残酷なため、グリム童話から削除された『青髭』

身の毛がよだち、血の気が引くようなお話だ。

 

グリム童話の初版は、今から200年以上前の1812年に出版されている。

(グリム童話について詳しくは⇒グリム童話とは

それから7回も改訂を重ねて、現在の形になったのだが、初版グリム童話にあって、7版グリム童話にはない話も少なくない。

 

実は、『青髭』には、グリム童話初版に収録されたものとは別に、ペローという人が書いた『青髭』が存在する。

この2つの『青髭』は詳細が若干異なるだけで、ストーリーの流れはほとんどかわらない。

そこで今回は、グリム童話より以前に出版されたペロー版の『青髭』に注目してみたい。

 

謎の男「青髭」

タイトルが示す通り、この物語には、青いひげをもつ男「青髭」が登場する。

昨今の日本でも、『Fate/Zero』というアニメで、キャラクターの1人、「キャスター(ジル・ド・レェ)」として登場している。

 

この男、よく考えると謎だらけだ。

 

まず、青いひげを持っている。

どれくらい青いのかというと、“とても醜く、とてもおそろしげで、どんな女も娘も、この男を目の前にすると逃げ出してしまう”くらい青いのだ。

 

そして、それにもかかわらず、すごくお金持ちである

町にも田舎にもりっぱな家をいくつも持ち、金銀の食器刺繍してある家具金色づくめの四輪馬車を持っていた。

毎日することといえば、散歩、狩り、釣り、舞踏会、宴会、食事と豪遊し放題だ

仕事もせず、遊び呆けていても底が尽きないほど、莫大な財産をもっている。

 

しかし、最大の謎は、彼の元妻たちの行方だ。

青髭は(その風貌がおそろしく、醜いと描写されているにもかかわらず)、今の妻と結婚する前にも、数人の女性をすでに妻にしていた。

(きっと財力で女たちを魅了したのだろう)

 

ところが、それらの女性たちがどうなったのかは、誰も知らない

まったくもって怪しい男である。

 

秘密の小部屋

ある日青髭は、6週間ほど家を留守にすると妻に告げる。

自分がいない間は、おおいにのんびりすごしてほしい、という。

 

それから、鍵束を渡しながら、一つ一つの鍵がどこの部屋の鍵で、その部屋に何があるかを妻に教える。

そして、こう言う。

 

「どの部屋をあけてもいい。どこへいってもいい。でも、あの小部屋にだけは、決して入ってはいけない、それだけはぜったい禁止する。もしあの小部屋をあけたりしたら、おれはおこって、君はどんなことになるか知れないよ」

 

すっごく気になる。絶対怪しい。

 

妻は、命令されたことは守ると青髭に約束する。

夫が出かけていくと、近所の女たちや、親しい友人たちが若妻のおうちへやってくる。

家中の部屋という部屋を眺め、そのあまりの美しさやりっぱさに、若妻をうらやましがった。

 

けれども、妻は上の空。

あの一階の小部屋に何があるのかを見たくて、見たくて、しょうがなかったのである。

 

そして、とうとう、好奇心に負けてしまい、一階の小部屋の前まで行ってしまった。

部屋の前で、いったん踏みとどまり、妻は、考えた。

 

もし言いつけを守らなかったらなにか悪いことが起こるのだろうか……と。

 

しかし、誘惑はあまりにも強く、妻はそれに打ち勝つことができない。

震える手で、小部屋の扉をあける。

 

最初は何も見えなかった。

窓が閉まっている室内は暗かったからだ。

しかし、しばらくして目が慣れてくると、おそろしい光景が目に飛び込んでくる。

 

床は一面に凝結した血で覆われ、その血に、まわりの壁にそってぶらさげられた女たちの亡骸が映っていたのだ。

これらの女たちは青髭が手にかけた元妻たちである。

 

女性たちが蝶の標本のように壁につるされている。想像すると怖すぎる。

 

ぬぐいきれない血の魔法

おそろしい光景を目の当たりにした妻は、恐怖のあまり、鍵を手から落としてしまう。

しばらくして少し気を取り直すと、鍵を拾い、部屋の鍵を閉め、気を落ち着かせるために自分の部屋へあがっていく。

 

もちろん、気を落ち着かせることなんて出来そうもない。

こうなってしまった以上、小部屋に入ったことが、青髭にばれないことを願うばかりだ。

 

しかし、そううまくはいかない。

落とした時に小部屋の鍵についた血が、どうしてもとれないのだ。

 

妻は、鍵についた血に気がつくと、二、三度ふいてみたが、血は全然落ちない

洗っても、砂でこすっても、やはり落ちない

 

実はこの鍵には魔法がかかっていて、血を完全にぬぐい去る方法は一つもなかったのだ。

ある箇所の血をぬぐっても、別のところにまた血が現れる。

なんて迷惑な魔法なんだ。

 

そして、その日の夕方、青髭が戻って来た。

途中で手紙を受け取り、それで用事が都合よく片付いたことが分かったので、早く帰って来たらしい。

 

それにしても、早すぎる

そして、タイミングが悪すぎる

 

次の日、青髭は妻に、鍵を返すようにと言った。

妻がしぶしぶ持ってきた小部屋の鍵に血が付いているのを見て、「なぜ、この鍵には血がついているのかね?」と聞く。

 

妻が顔面蒼白で「さあ、さっぱりわかりませんが」と言うと、青髭はこう叫ぶ。

 

「知らないだって?ところがおれはちゃんと知っている。あまえはあの小部屋へ入ろうとしたんだ!よかろう、奥さん、はいりたければはいりなさい。はいって、おまえが見たご婦人がたのそばに、おまえ自身の席を作るがいい」

 

「次はお前だ!」宣言!

青髭は若妻を自分のコレクションの加えることに決めたのだ。

 

青髭の最期

ところで、その日は妻の2人の兄たちが、青髭の家に来る約束になっていた。

妻は、せめて神様の元に行く前にお祈りをさせて下さい、と青髭に頼み、時間を稼ぐ。

 

 

妻はひとりきりになったとき、お姉さんを呼び、「塔のてっぺんにあがって、兄さんたちが見えたら、急いでくるように合図を送ってください」とお願いする。

 

しかし、兄たちはなかなか来ない。

待ちきれない青髭は、早くおりてこい、と妻に向かって何度も叫ぶ。

やっと兄たちが見えたと姉が言った時、青髭が大声で叫びだし、妻は泣きながら青髭の足元に身を投げ出した。

 

青髭が妻の髪の毛をつかみ、もう片方の手で包丁をかざして、今にも妻の首を切ろうとした瞬間。

扉を激しく叩く音が聞こえ、二人の騎士が入って来た。

兄たちは手に剣を持ちながら青髭に向かっていき、剣で青髭を貫いた

 

こうして、青髭は最期の時を迎え、後継ぎのいない彼の財産は全て妻のものになった。

妻は、自分を助けてくれた姉と兄たちに財産を分け与え、自分も残りの財産を使って、りっぱな男性と結婚し、幸せに暮らした。

 

 

ちなみにグリム童話初版では、妻の姉は登場しない

そして、兄が2人ではなく3人である。

また、兄たちはもともと約束していたから来るのではなく、妹の叫び声を聞いてやってくることになっていた。

 

とにかく兄たちが来てくれてよかった。

 

まとめ

いかがだっただろうか。

グリム童話の初版に収められていた『青髭』、なかなか残酷で恐ろしい話である。

 

童話の中には、「これをしてはいけない」と言われた主人公が、その約束を破ることで苦境に陥るような教訓的な話がいくつかある。

『青髭』にも、好奇心は魅力的だが、後悔の種になる、というような教訓が添えられている。

 

しかし、そもそもなぜ青髭は、そこまで入ってほしくない小部屋の鍵を妻に渡したのか。

また、6週間も家をあけるつもりだったのに、妻が小部屋に入ってしまったその日にたまたま帰って来たのか。

偶然にしては出来すぎている。

 

しかも、どうしてあの鍵には不可解な魔法がかかっていたのか。

全ては青髭が妻を手にかける口実を作るためのように思えてならない。

 

グリム童話から消えてしまった話『青髭』。やっぱり怖い話だ。

 

 

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⇒姉たちのバラバラな体を妹がくっつける「フィッチャーの鳥」がエグい

 

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⇒グリム童話初版の白雪姫は、原作よりも残酷

 

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