グリム童話『二人兄弟』のあらすじや、物語の教訓・感想など関連する内容を詳しくお伝えします。
結末までネタバレしていますので、ご了承ください。
『二人兄弟』のあらすじ
むかし2人の兄弟がいて、ひとりは金もちの金細工師で心がねじれていて、もうひとりは貧乏だが正直で、2人の子どもがいた。
あるとき、貧乏な男が小枝を森に取りにいくと、1羽の金でおおわれた美しい鳥をみつけ、その羽を1枚手にしたので、それを拾って兄の金細工師にみせると、それは純金でできていることがわかり、兄はひきかえにたくさんお金をくれた。
翌日、弟はまた森に行くと、次は鳥の巣で金の卵を見つけ、それも純金でできていることがわかったので、兄はお金を弟にわたすと、今度は鳥そのものがほしいと言った。
そして貧乏な弟はまた森に行き、鳥を落として兄のところへ持っていくと、兄はひきかえにたくさんの金貨をわたしたので、貧乏な弟はこれで生活できると安心して帰った。
兄は、その鳥の肝と心臓を食べると毎日金貨が1枚見つかるようになるということを知っていたので、妻に鳥を丸焼きにするようにたのんだ。
しかし、妻が鳥を火にかけて離れたとき、おなかをすかせた弟の2人の子どもがやってきて、鳥から落ちた2つの小さいものを食べてしまった。
妻はそれを知り、なんとかして夫にばれないようにするため、ニワトリを殺してその肝と心臓を金の鳥の丸焼きにそえ、夫は何も知らずに全部たいらげた。
それから、2人の子どもが朝起きると、毎日金貨が2枚あらわれるので、弟はふしぎに思って兄に相談する。
兄は2人の子どもがあの鳥の心臓と肝を食べたのだとわかり、仕返しをしてやろうと思って、その2人には悪魔がとりついているからすぐに森に捨ててしまえと伝える。
弟は、悪魔をこわがっていたのでそのとおりにしてしまった。
2人の子どもが森にいると、ある親切な猟師がやって来てわけを知り、自分が育ての親になることを申しでる。
こうして兄弟は見習いとして猟師の家でお世話になり、猟師は2人のもとにあらわれる金貨を将来のために毎日貯金していった。
そして兄弟は猟師の試験に合格する。
その夜、猟師に世の中に出ていきたい伝えると、猟師は応援すると言って、2人が旅立つときとてもよい銃と犬をあたえ、そして貯めておいた金貨を好きなだけとらせた。
最後に光るナイフを手渡し、それは兄弟がいつか別れることになったとき、その別れた道にある木に差して、もしも兄弟のどちらかが死んでしまうと、その死んでしまった方のナイフの面はさびてしまうということだった。
兄弟は旅に出ると、まず森の中で年老いたウサギを見かける。
銃をかまえると、ウサギは2匹の子どものウサギとひきかえに命ごいをした。
兄弟はかわいそうになって2匹のウサギを殺すことができず、それを旅のお供にした。
このように、兄弟はキツネ、オオカミ、クマ、ライオンをも続けて2匹ずつ仲間にとり、旅をつづけることになった。
やがて兄弟は別々の道に進むことを決め、そこにあった木にナイフを刺し、2匹ずついる動物たちをそれぞれ1匹ずつお供にしていくことにした。
弟は、ある村に行きあたると、そこでは一帯が黒におおわれていた。
宿屋でどういうわけなのかをたずねると、その国は竜に悩まされていて、竜は毎年、乙女を1人要求していて国じゅうの乙女がいなくなってしまい、つぎは姫の番なのだとわかる。
王さまは、その竜を倒したものには姫を花嫁にとらせて、王位も継がせる、というおふれを出していて、多くの兵士が立ち向かったが、だれも生きて戻ったものはいないということだった。
弟が次の日、その竜のいる山に登っていくと小さな教会があり、祭壇には3つの杯が置かれ、となりには剣が刺さっていた。
よく見るとそこには、「この杯をとって飲めばとなりの剣を引き抜く力がつく」と記されており、弟はその杯を取って飲み、力をみなぎらせて剣を引き抜いた。
一方、王国の姫は、自分はもうすぐ竜のものになってしまうのだと絶望しながら山をのぼっていて、そのあたりのようすを長官はしばらくうかがっていることに決めた。
しかし、姫が山の頂上に行きつくとそこには猟師の姿があり、彼は姫を礼拝堂に追いやって、自分が竜を退治して姫を守ることを約束する。
そしてあらわれた7つの頭をもつ竜と剣で戦い、動物たちの力も借りて、竜をやっつけた。
姫は猟師が竜をやっつけたことにおどろいて、あなたはわたしの夫になる、といい姫のハンカチを渡した。
そして猟師は、竜の7つの頭の舌を切り落としてそのハンカチにつつみ、しばらく休むといって動物たちにあたりの見張りをたのんだ。
しかし、他の動物もとても眠く、大きい動物から小さい動物に見張りがまわっていって、やがていちばん最後になってしまったウサギも眠りこんでしまう。
そこに、しばらくようすをうかがっていた長官があらわれ、竜がやっつけられているのを見て、自分の手柄にしてしまおうと思い、猟師の首をはね、竜の頭は切り落として姫を連れ去った。
姫は途中で目を覚ましたが、長官が竜を殺したのだと、王にウソをつくようおどされる。
長官は姫をつれて城に戻ると、王さまは生きて戻ってきた姫を見てとてもよろこび、長官の話が本当なのか確かめると、おどされていた姫は、「そのとおりだけど結婚式は1年後にしてほしい」と答える。
やがて、猟師のそばで眠りこんでいた動物たちは目を覚まし、自分たちの主人が殺されているのを見てそれをウサギのせいにした。
ウサギは、ここから200時間かかる山にどんな人も生き返らせることのできる根っこが生えているのを知っている、というので、動物たちはそれを24時間以内に取ってこいとウサギに言いつける。
ウサギがその根っこを取ってくると、それで主人はすっかり息を吹きかえしたが、姫がいなくなっているので悲しみにくれた。
それから1年のあいだ、猟師は世の中をさまよっていて、あるとき姫を竜から救った国にふたたび行きつくとそこは深紅の布でおおわれていた。
猟師は宿屋にそのわけを聞くと、明日、竜をやっつけた長官が姫と結婚式をあげることになっているという。
次の日になって、猟師は亭主に、「もし今、王さまのテーブルのパンをここにもってきて食べるつもりだといえば信じるか」とたずねる。
亭主はそんなことは金貨をかけても信じられない、とこたえた。
すると、猟師はウサギに王さまのところへ行ってパンを取ってくるように命じ、ウサギは追いかけてくる犬たちをまきながら、城の中の姫のところへ行く。
姫は、ウサギが自分があの時あげた首かざりをしているのでとてもよろこび、望みどおり王さまの食べるパンを取ってこさせ、ウサギはパン職人にそれを宿屋の戸口まで運ばせた。
同じような流れで、王さまが食べるのと同じ焼き肉、付け合わせの野菜、お菓子、ワインを、動物たちをつかって持ってこさせ、このようにして猟師は姫がまだ自分を愛していることを確認できたのだった。
そして亭主に、今から王さまのところへ行って姫と結婚してくるというが、亭主はそれを金貨1000枚かけても信じられない。
これに対して、猟師は本当に金貨1000枚をかけた。
そのころ宮廷で、王さまが姫に、なぜ動物たちがつぎつぎたずねてきたのかをきくと、姫は動物たちの主人を呼んでほしいと王さまに話す。
そして宿屋には王さまの使いがあらわれ、王さまがまねいていると聞いて、猟師は王家にふさわしい服と馬車を持ってこさせたのち、城に出向いた。
それから、王さまの前で姫のハンカチにつつんであった7つの舌を取り出し、竜の口にぴったり合うことをその場で見せつけ、自分が竜を倒したのだということを証明した。
そして姫も王さまに本当のことを話したので、長官は処刑されることになり、猟師は姫と結婚して、総督に任命された。
若い王は自分の父親と育ての父親をよび、あの宿屋の亭主もよんで、かけには勝ったが、金貨1000枚はあげる、といった。
若い王は姫と幸せに暮らし、狩り好きの王にはいつもあの動物たちがお供をした。
城の近くにはある森があり、その森では幽霊が出て一度入ると出てくることはできない、という噂があった。
あるとき、若い王さまはそこで動物たちと狩りをしに行き、やがて白いシカを見つけたのでそれを森の奥まで追っていった。
結局シカに追いつくことはできず、森の奥深くまできてしまったため、そこで一晩明かすことにして木のそばで火を起こしていると、上に魔女が座っていた。
王は魔女だとわからず、降りてくるようにいうが、動物がこわいので今から投げ落とす木の枝で動物たちの背中を打つようにと魔女はいう。
王さまはそれで動物をたたくと、動物たちは石になってしまい、しまいに魔女は王さままでも石に変えてしまった。
仕事がみつからずさまよっていた王の兄は、ナイフの側面が半分だけさびているのを見て、弟を救えるかもしれないと、弟の行った国に入り、そこでその番兵に王が戻ったのだと間違えられる。
兄は弟を救うために、弟になりすましたまま城で過ごし、どうやら弟は森の中でゆくえがわからなくなったのだということを探りあてた。
その晩は弟のベッドで姫と寝なければならなかったが、自分と姫とのあいだに両刃の剣をさしておいた。
そして次の日、森へ入って同じように白いシカを追い、であった魔女をおどして弟とお供の動物を石からよみがえらせる。
魔女は処刑にし、2人はよろこびあう。
しかし、兄は弟になりかわって城で姫と時間を過ごし王のベッドで寝なければならなかったという話をすると、弟はしっと心にかられたて、兄の首を切り落としてしまう。
弟はすぐに後悔の念にかられ、そこでウサギがかつて首を治した山の根っこをふたたび持ってきてくれたので、兄は生き返ることができた。
そして2人はべつべつの門から城へもどり、姫は2人の兄弟を前にしてどちらが自分の夫かわからなくなったが、お供の動物が金の首かざりやとめ金をしていたため、本物の王を言い当てることができた。
そして、みんなで楽しく食事をし、ベッドに両刃の剣を夜置いていた理由を姫がたずねたので、弟は兄がとても誠実であったことがわかった。
『二人兄弟』の教訓・感想など一言コメント
とにかく長いお話。
兄弟もので、話が二転三転する長編小説のようです。
いろいろな話がからまり合っていますが、魔女が出てくるのもおもしろいポイント。
おばあさんを安易に信頼したせいで石にされてしまうシーンには、初対面の人には警戒心を持つべき……という教訓もありそうです。
『二人兄弟』の基本データ
収録ナンバー
KHM060
原作タイトル(ドイツ語)
Die zwei Brüder
英語タイトル
The Two Brothers
日本語の別タイトル
- 「2人の兄弟」
など
収録版
2版から7版まで