ヨリンデとヨリンゲルが出会う魔女は、グリム童話でもっとも怖い?

ヨリンデとヨリンゲルが出会う魔女は、グリム童話でもっとも怖い?
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『ヨリンデとヨリンゲル』という、怖い魔女が出てくるグリム童話をご存じだろうか。

子どもの頃に聞かされた、という人は少ないだろうが、様々な絵本も出ている有名な話のひとつである。

近頃は、童話をテーマにしたゲームの「グリムノーツ」や「グリムエコーズ」に登場するキャラクターとしても知られているかもしれない。

⇒ヨリンデとヨリンゲルのあらすじはこちらから

 

そこそこに知られている話だとは思うが、グリム童話で読んだことはあるだろうか?

そして、この話に出てくる魔女がどれほど怖いか、あなたは知っているだろうか?

この記事では、そんな『ヨリンデとヨリンゲル』の怖い魔女に注目しながら、話を追っていこうと思う。

ヨリンデとヨリンゲルの魔女

『ヨリンデとヨリンゲル』の魅力は、なんといっても怖い魔女

おそらくあなたがイメージする「怖い魔女」のイメージに近く、他の童話に出てくる魔女に比べてもパワーがすごい。

⇒ハロウィンにぴったり!?怖い魔女が出てくるグリム童話のお話10選

 

この魔女のスペックは以下のとおり。

  • 猫やフクロウに姿を変えることができる
  • 城から100歩のところまで近づいた人間の動きを封じることができる
  • 若い娘が城に近づくと、娘を鳥の姿に変えてカゴに閉じ込める

 

魔法のパワーがすさまじく、恐ろしい雰囲気を醸し出している。

しかも、鳥が閉じ込められているカゴの数はなんと7000もある。

少なくとも、7000人の娘が魔女に捕まったということだろう。

悪さの規模もすごい。

お菓子の家で、ちまちまと子どもを捕まえようとしている『ヘンゼルとグレーテル』の魔女とは大違いだ。

 

グリム童話初版には、

おばあさんは魔女のなかでも、特に抜きんでた魔女でした。

との描写もある。

魔女の中でも、トップクラスの魔女なのだ。

 

ちなみに、魔女が変身する猫もフクロウも、中世ヨーロッパの世界では忌み嫌われる存在だった。

猫なんかは、「魔女の使い魔」としても有名だったようだ。

ジブリの『魔女の宅急便』で、猫と魔女が一緒にいるのも、そんな背景があるのだろう。

森に迷い込んだヨリンデとヨリンゲル

ではここで、主人公ヨリンデとヨリンゲルにも注目してみよう。

 

ヨリンデは他のどの娘よりも美しいとされる、絶世の美女である。

「美しい娘」というのはグリム童話でもよく出てくるが、たいていはお姫様である(もしくは、結婚してお姫様になる)ことが多い。

一般人でこれだけ美しいと絶賛されているのは、なかなか珍しいキャラクターだ。

 

そして、彼女の婚約者になっているのが、他でもないヨリンゲル。

ヨリンゲルは別にかっこいい王子様でもなんでもない。

一途にヨリンデを愛する、一人の男である。

 

互いの愛は計り知れないほど。

俗にいうバカップルかもしれない。

2人は心を開いて話ができるようにと、森の中へと足を踏み入れる。

 

森の中では、ヨリンデがときどき涙を流すほど、語り合っていたらしい。

ヨリンゲルのほうも、切ない気持ちを打ち明けたようだ。

よほど、2人の内なる想いをぶつけ合ったのだろう。

 

この場面をしっかり描いていたら、少しシリアスな若者の青春恋愛モノで、感動する話になっていたかもしれない。

だが、当たり前だが、これはグリム童話。

ここからが「恐怖」の始まりである。

ヨリンデがナイチンゲールになる

森の中で感情が高ぶっているうちに、帰り道がわからなくなってしまうヨリンデとヨリンゲル。

心配になっていると、すぐ近くに「城の古い壁」が見えてきた。

 

鬱蒼(うっそう)とした森の中に、突然現れる古城。

ダークな雰囲気がどんどん高ぶってくる。

どことなく『ヘンゼルとグレーテル』にも似てきてしまった。

これはもう、魔女のお出ましだろう。

 

古城が出てきた瞬間、ヨリンゲルは生きた心地がしなくなった。

彼は気づいてしまったのだ。

魔女の気配に。

 

そして次の瞬間、横にいたヨリンデが歌い始めた。

時すでに遅し。

ヨリンデは、ナイチンゲール(小鳥)に姿を変えられていたのである。

動きを封じられるヨリンゲルと、魔女の出現

ヨリンデの変わり果てた姿に気づいたヨリンゲルは、その場で動けなくなってしまう。

そこには、フクロウが飛び回っていたのだ。

おそらく魔女が姿を変えたものだろう。

 

ヨリンゲルは、ただその場で立ち尽くすばかり。

泣くこともできなければ、話すこともできず、手足を動かすこともできない。

完全な金縛り状態である。

 

特にその場で呪文をかけたわけでもなく、ただフクロウが飛んでいるだけで、動きが封じられている。

この魔女、やはりかなりのやり手である。

 

そして日が沈んだ頃に、フクロウが茂みへと飛び込み、老婆の姿となって再登場する。

いよいよ、魔女のご登場だ。

 

見た目の特徴としては、

  • こしが曲がっている
  • 黄色い肌をしている
  • やせこけている
  • 大きな赤い目をしている
  • 曲がった鼻があごまで届いている

といった感じらしい。

黄色くて赤い目の時点で、けっこう見た目のインパクトは大だろう。

普通のおばあさんの格好で出てくることの多いグリム童話の魔女たちだが、これはなかなかの恐ろしい外見だ。

グリム童話の中でももっとも怖い魔女の1人と言っていいだろう。

 

そしてヨリンゲルは何もすることができないまま、ナイチンゲールとなったヨリンデは連れていかれてしまった。

無力とはまさにこのことだ。

お互いの気持ちを確かめ合った後だけに、やり切れない感情に押しつぶされたことだろう。

魔女の手下は天使

その後、魔女はまた戻ってきて、こんなセリフを吐く。

「これ、ツァヒールや、お月さまがかごの中を照らしたら、はなしておやり、よいころあいだよ!」

このセリフのあと、ヨリンゲルはやっと動けるようになるのだ。

解放の呪文だろうか……。

 

と思いきや、実はここで出てくる「ツァヒール」とは天使のひとり。

ドイツ語の原文では “Zachiel” となっており、訳によっては「サキエル」とか「ツァヒエル」とも呼ばれる。

物語の中では、いまや魔女の手下というわけだ。

 

ヨリンゲルの動きが封じられたのも、このツァヒールという天使がやったことなのか。

自分の魔法であっても、天使を使ったのであっても、いずれにせよ魔女としてのパワーはすごい。

 

魔女の命令によって天使がヨリンゲルを解放すると、身動きができるようになる。

ヨリンゲルはひざまづき、ヨリンデを返してくださいとせがむ。

当たり前だが、そんな簡単に返してくれるはずがない。

 

絶対に返さないと言い放ち、魔女はその場を去っていく。

泣き崩れるヨリンゲル。

なす術(すべ)もなく、泣くことしかできない。

ヨリンゲルが夢に見た、魔法を解く花

この魔女を倒す方法はないかというと、ここで出てくるのが「花」というアイテムだ。

 

ヨリンゲルは知らない村にやってきて、羊飼いとして働くことになる。

何をしたらいいかわからず過ごす日々の中で、ある日、ヨリンゲルは夢を見る。

夢の中で見つけるのが、“真ん中に大きな真珠のある血のように赤い花” なのだ。

まさに、RPGで登場しそうなアイテムである。

 

この花こそ、魔女の魔法を解き放ち、魔女を倒すための秘策。

魔法をすべて解くシーンを夢で見たヨリンゲルは、現実世界で花を探し始める。

9日間も山や谷を探し回った末に、その花を探し出すことに成功するのだ。

 

夢で見たモノが、本当に現実で現れた。

あなたもそんな経験はないだろうか?

ヨリンゲルがヨリンデを救う、魔女との対決

赤い花を持って、魔女の城へと近づくヨリンゲル。

ただし、今回は動きを封じられることもなく、城の門もあっけなく通過できる。

花を持っているおかげだ。

 

城の中へ入り、小鳥の鳴き声のするほうを探し回る。

そして、広間に出たところで、とうとうおばあさん魔女の姿を発見!

そこには、7000のカゴに入った鳥たちにエサをやる姿が(ちゃんとエサは与えて生かしているようだ…)。

 

何千人もの若い娘を捕らえてきた魔女。

しかし、そんな怖い魔女も、ヨリンゲルが持ってきた花の前では歯が立たない。

魔女はヨリンゲルを見て、おそろしく腹を立てる。

きっと、能力が使えればソッコーで攻撃していただろう。

 

だが、残念ながら、今回は魔女の能力が封じられる番。

魔女は2歩以上、ヨリンゲルに近づくことはできなかったのだ。

 

そんな魔女を無視して、ヨリンゲルは必至でヨリンデを探す。

しかし、7000ものカゴがある中で、どれがヨリンデがさっぱりわからない。

全員一気に解放すればいいのではというツッコミはさておき……。

こともあろうか、ヨリンデが変えられてしまったナイチンゲールを、魔女のおばあさんが自ら持ち逃げしようとするのだ。

 

これに気づいたヨリンゲルが、すぐ魔女のところへ行って、花で攻撃!

いや、ちょこんと触って、ヨリンデは見事に復活。

愛の力である。

 

そして、花で触られた魔女も、魔力を失ってただのおばあさんになってしまう。

花の力もすごい。

 

ヨリンデと無事再会を果たしたあと、ほかの娘さんたちも全員解放して、一件落着だ。

ヨリンデとヨリンゲルはこの後も仲良く暮らしてハッピーエンド。

 

ヨリンデが解放されたときの描写には、こんな一文があった。

ヨリンデは、前と少しも変わらずきれいでした。

ノロケ……いや、魔女による怖さの一方で、愛に満ち溢れた童話でもあるのだ。

まとめ

今回は『ヨリンデとヨリンゲル』に注目して、魔女の怖さと2人の主人公を追ってみた。

残酷なシーンはないが、そのダークな雰囲気にはじわじわと迫ってくるような怖さもある。

魔女という存在が、はっきり恐ろしく描かれた童話である。

 

ちなみに、初版と7版ではそこまで差はなく、初版だから怖いというわけではない。

残酷なシーンはそこまでないため、あまり改訂もされなかったようだ。

魔女が怖い一方で、ヨリンデとヨリンゲルの愛情がにじみ出ている童話でもある。

王様やお姫様といったステータスもなく、懸命に生きる健気な2人の男女の姿がしっかりと描かれているのだ。

気になる人は、ぜひ読んでみてほしい。

 

■引用・参考
初版グリム童話集〈2〉

いまのあなたはどの童話キャラ?
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