『トイ・ストーリー4』で大活躍のボー・ピープは、元ネタが2つ?

【トイ・ストーリー】ボー・ピープの元ネタ

今回は、ディズニー映画『トイ・ストーリー』に登場するおなじみのキャラ、「ボー・ピープ」の元ネタについて見ていこうと思う。

ボー・ピープといえば、貴婦人のような姿の陶器製の人形。

『トイ・ストーリー』の1作目から、ウッディといい感じだった羊飼いの女性である。『トイ・ストーリー4』では、それはそれは大活躍を見せてくれる。

 

実はこのボー・ピープ、元ネタは『マザー・グース』という、アメリカやイギリスで親しまれている伝承童謡集にいる羊飼いの女の子だ。

だが、ボー・ピープがいるのは『マザー・グース』だけではない。

なんと、かの有名な「アンデルセン童話」の中にも、ボー・ピープのような羊飼いが登場する物語があるのだ!

ということでこの記事では、ボー・ピープらしき羊飼いが登場する2つの話を詳しく見てみよう。

目次

ボー・ピープってどんなおもちゃ?

そもそも、ディズニー映画『トイ・ストーリー』に登場するボー・ピープとは何者なのか。

おもちゃたちが動く『トイ・ストーリー』だが、ボー・ピープはおもちゃではなく陶器の人形だ。

全4作品ある『トイ・ストーリー』シリーズのうち、「1」、「2」、「4」の3作品に登場している。

 

ちなみにボー・ピープ(Bo Peep)という名前は、日本語では「いない いない ばあ」の意味。“Play bo-peep” で、「いないいないばあをする」という意味にもなる。

このフレーズは、シェイクスピアの作品『リア王』(1604年)の一節にも登場するくらい古いものだ。

 

さて、アンティークな感じのボー・ピープ。

元ネタ『マザー・グース』はそもそもできあがった年代がわからないほど謎めいた古さがあるので、ボー・ピープにも古さがあるのだろう。

まるで骨とう品のようだ。

 

おもちゃではないため、アクションの激しいシーンでは登場しないことがほとんど。

「1」と「2」では、ウッディやその仲間たちを見守るやさしい女性といったイメージで、電気スタンドの横にたたずんでいる。

「3」でいったん登場しなくなって、「4」でふたたび現れるボー・ピープ。

物語上では、「3」よりも前の時点で、主人公アンディの妹モリーがボー・ピープを手放し、ウッディたちと別れた設定になっている。

大人の事情としては、「3」のラストに出てくる焼却炉のシーンに、ボー・ピープを出演させることができなかったかららしい(陶器の人形なので、すぐ溶けてしまう……)。

 

いなくなったボー・ピープは、「4」でウッディと再会。

移動遊園地で自由に生きる、「かっこいい大人の女性」的な感じで生まれ変わっているのだ。

派手なアクションもこなすクールビューティとして登場する。

マザー・グースのボー・ピープ

そんなボー・ピープ。

元ネタと言われる『マザー・グース』のほうではどうなっているか。

 

『マザー・グース』では、まずボー・ピープは大人じゃない。

可愛らしい子どもである。

子どもの羊飼いが連れていた羊がいなくなってしまい、それを見つけるという内容。

実際の詩はこんな感じ。

Little Bo-Peep has lost her sheep,
And doesn’t know where to find them;
Leave them alone, and they’ll come home,
And bring their tails behind them.

Little Bo-Peep fell fast asleep,
And dreamt she heard them bleating;
But when she awoke, she found it a joke,
For they were still a-fleeting.

Then up she took her little crook,
Determined for to find them;
She found them indeed, but it made her heart bleed,
For they’d left their tails behind them.

It happened one day, as Bo-Peep did stray
Into a meadow hard by,
There she espied their tails side by side,
All hung on a tree to dry.

She heaved a sigh and wiped her eye,
And over the hillocks went rambling,
And tried what she could, as a shepherdess should,
To tack each again to its lambkin.

<訳>

可愛いボー・ピープの羊がいなくなった
どこへ行ったかもわからない
放っておけば、帰ってくるよ
おしりのしっぽを振りながら

可愛いボー・ピープは眠ってしまった
羊の鳴き声が聞こえたみたい
起きたらそれは、夢だとわかったよ
羊は見つかっていないから

彼女は杖をとって、
羊たちを探そうと思った
やっと見つけたけど、悲しくなったよ
羊たちがしっぽを忘れてきちゃったから

ある日、可愛いボー・ピープは
牧草地のすぐ近くに行って
並んだ羊たちのしっぽを見つけたよ
木につるされて、干されていたんだ

彼女はため息ついて、涙をふいて、
小丘を超えてぶらぶら歩いた

そして羊飼いとして、何ができるか考えた
羊たちにまたしっぽをくっつけるためにね

 

話の内容を簡単に表すと、

  • 羊飼いのボー・ピープの羊がいなくなって、
  • 羊たちのしっぽはなくなっていて、
  • しっぽが木につるされているのを見つけて、
  • ボー・ピープはしっぽをくっつけようとがんばる

と、こんな詩である。

グリム童話に負けず劣らず恐ろしい『マザー・グース』だが、この詩はけっこう可愛らしい感じだ。

 

ただ、よくよく想像してみてほしい。

 

羊を見つけたら、みんなしっぽが切れているのだ。

そして、そのしっぽが木に並んで干されている……。

やっぱり、じわじわとエグい話である。

 

なぜしっぽがないかまではわからないが、もしかしたら切り取られてしまったのかもしれない。

まるで『くまのプーさん』に出てくるイーヨーみたいだ。

 

ちなみにイギリスでは、ボー・ピープという名前の羊飼いが本当に存在したという伝説もあるらしい。

意外と奥が深いボー・ピープちゃんである。

ボー・ピープの羊たち

羊たち

もともとは羊飼いの女の子として登場したボー・ピープ。

あまり目立ってはいないかもしれないが、実は『トイ・ストーリー』のボー・ピープも、ちゃんと羊を飼っている。

しかも、実は名前もちゃんとついている。

それぞれ、

  • ビリー
  • ゴート
  • グラフ

だ。

3匹の羊が1体にくっついており、ボー・ピープとセットになっている。

『トイ・ストーリー4』では、けっこう目立って出てくる存在に。

性別も、メスであることが判明する(名前は男っぽいが……)。

もちろんしっぽはついている。

アンデルセン童話のボー・ピープ

さて、ボー・ピープっぽい羊飼いの女性は、「アンデルセン童話」にも登場する。

それは、『羊飼いの娘とエントツ掃除人』という童話だ。

『完訳 アンデルセン童話集 3』

この童話は、子ども部屋の棚に立っている、陶器の人形が主人公。

金色の帽子をかぶり、金の靴をはき、バラの花模様のスカートをはき、杖をもった羊飼いの娘である。

まさにボー・ピープそのものだ。

実際、似たような人形は多く出回っているのだろう。

 

さて、この人形が何をするかというと、もう一人の主人公である煙突掃除屋の人形と結婚するのだ。

そこまでの苦労を描いた、可愛らしい物語である。

では、あらすじを見てみよう。

ボー・ピープに似た『羊飼いの娘とエントツ掃除人』のあらすじ

子ども部屋の棚の上に、羊飼いの娘の人形が立っていた。

その隣には煙突掃除屋の人形が置いてあり、羊飼いの娘は彼のことが好きだった。

煙突掃除屋の人形も羊飼いに好意をいだいていて、結婚の約束をしていた。

 

ところが、古いたんすが羊飼いの娘を嫁に迎えると言い出した。

羊飼いの娘は嫌がったが、自称おじいさんである首振り人形に、嫁に行くよう説得させられる。

首振り人形なので、古いたんすの申し出にも首を縦に振ってしまい、断れなかったのだ。

 

そこで、羊飼いの娘は煙突掃除屋の人形と一緒に逃げることにする。

2人は部屋にある引き出しや香料壺の中に逃げようとするが、最終的に煙突のてっぺんまでのぼることにした。

 

暖炉の中から暗闇を抜けて、2人はなんとかてっぺんまでたどり着く。

外の広い世界を見てワクワクするが、羊飼いの娘がやっぱり部屋に帰りたいといって泣き出す。

 

また暖炉の中をくぐって部屋に帰ると、首振り人形のおじいさんが床に倒れて壊れていた。

2人がおじいさんの壊れた首を治すが、もう首を縦に振れなくなってしまった。

そのせいで、古いたんすが娘を欲しいといってきても、「はい」とうなずくことができなかった。

こうして、羊飼いの娘と煙突掃除屋の人形は、めでたく結婚することができた。

結婚するボー・ピープ

『マザー・グース』とはちがって、「アンデルセン童話」のボー・ピープは大人の女性。

結婚するために奮闘する姿が描かれる。

子どものボー・ピープちゃんも可愛い話だが、「アンデルセン童話」のほうも、なかなかに可愛らしい話だ。

 

自称羊飼い人形のおじいさんの首振り人形が、首を縦にしか振れないせいで結婚の申し出を断れない設定が、なかなかギャグでおもしろい。

っていうか、勝手におじいさんを名乗って、結婚の許可を出すなっていう話だ。

 

ともあれ、なぜかおじいさんは床に倒れて壊れてしまい、首を振れなくなってしまう。

そのおかげでたんすの結婚の申し出を断って、煙突掃除屋とめでたく結婚できる、謎のシンデレラストーリーなのである。

 

古いたんすの圧力は、どことなく『トイ・ストーリー3』のロッツォに似ているかもしれない。

年季が入っていると、若い2人にとっては恐ろしいものなのだろうか……。

おじいさんのプレッシャーでむりやりな結婚をさせられなくてよかった。

 

しかし、この部屋の中での、人間じゃないものがやり取りをする感じは、実に『トイ・ストーリー』っぽい。

羊飼い人形がたんすに結婚を申し込まれるとかいう謎の設定だが、本人たちにとっては大真面目な世界なのだ。

 

こんな感じで、「アンデルセン童話」では大人(若い娘)のボー・ピープが見られる。

羊は出てこないが、羊飼い人形の愛と感動の(?)物語である。

まとめ

今回は『トイ・ストーリー』に出てくるボー・ピープの元ネタらしき話を2つ、紹介した。

『マザー・グース』と、「アンデルセン童話」の『羊飼いの娘とエントツ掃除人』である。

『トイ・ストーリー4』では、性格も雰囲気も変わったボー・ピープだが、元ネタのほうにもいろいろな羊飼い女性が存在する。

『トイ・ストーリー』が好きな人は、いろいろなボー・ピープを読み比べてみてはいかがだろうか。

 

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■引用・参考:http://nurseryrhymesmg.com/rhymes/little_bo_peep.htm

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