『アラジン』原作のジーニーは怖い?ディズニーと千夜一夜物語を徹底比較!

『アラジン』原作のジーニーは怖い?ディズニーと千夜一夜物語を比べてみた

ディズニーアニメの『アラジン』に出てくるランプの精といえば、みんなの人気者「ジーニー」だ。

ジーニーといったら青くて大きな身体。ジョークを飛ばしまくるやたらとハイテンションなランプの精(ランプの魔神)という印象が強いだろう。

そんな陽気なイメージのジーニーの元ネタは、『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』という説話集だ。

知っている人も多いだろうが、千夜一夜物語に入っている話の1つ、『アラジンと魔法のランプ』『アラジン』の原作である。

もちろん、原作の中にも「ランプの精」は登場する。

だが、それはみなさんが知っているジーニーとはかけ離れた、恐ろしい姿の魔神なのだ。

今回は、そんなディズニーアニメ版と原作『千夜一夜物語』の「ジーニー」を、比べてみたいと思う。

ディズニーアニメの「ジーニー」

まず、ディズニーアニメ版のジーニーから見ておこう。

ジーニーは、ランプの中に眠る「ランプの精」だ。字幕によってはランプの「魔神」だったりもする。

主人であるアラジンとは親友になり、いろいろな面でアラジンを助けてくれる。

とにかく、すっごくいいやつである。

ディズニーのジーニーは陽気な性格

特徴はなんといっても、その陽気で明るい性格。

いろんなジョークを飛ばしたり、思わず吹き出しそうなセリフを言ったりもする。

英語では元コメディアンのロビン・ウィリアムズが声優をやっていて、軽快なセリフ回しはさすがの一言。

しかし、日本語吹き替え版の山寺宏一こと「山ちゃん」も負けてはいない。

ロビン・ウィリアムズに負けず劣らずのハイテンションで、見事、陽気なジーニーを作り上げているのだ。

 

陽気ではあるが、本当は自由になりたいと、悩みを抱えるちょっと繊細な面もある。

そして、ランプの中はせまくてイヤだとのこと。

確かにあの巨体ではせまくて窮屈だろう……。

ディズニーのジーニーは願い3つまで

ジーニーは、呼び出した主人の願いを3つまで叶える能力がある。

3つ限定だが、魔法の力でなんでも叶えてくれる。

ただ例外として、

  • 人を殺すこと
  • 恋愛にかかわること
  • 死人をよみがえらせること

はできない。

もちろん、「願いを増やす」なんてずる賢い願いもアウトだ。

 

アラジンがジーニーにかなえてもらった3つの願いは、以下のとおり。

  1. 王子にしてもらうこと
  2. 海から助けてもらうこと
  3. ジーニーに自由になってもらうこと

あと、ランプを探しに入った「魔法の洞窟」から抜け出す手助けもしてくれている(願ったわけではなく、ジーニーが自分から助けるよう仕向けた)。

 

魔法といっても、願いは一瞬にして叶うわけではないらしい。

たとえば、アラジンが王子になりたいといった場面。

魔法ですぐ王子の地位が確立されるわけでなく、服を着がえて、アブー(サル)をゾウに変えて、パレードを行ってと、王子っぽく見せるための演出をほどこした。

本当に王子になったわけでなく、ジャスミン王女をはじめとした宮殿の人々に、王子だと信じ込ませたわけだ。

他の人たちがアラジンを王子だと思うような、心変わりをさせることまではできないらしい。

意外と地道に、けっこう手の込んだことをする。

 

しかし、空を飛んだり、分身したり、変身したりと、人間ワザではないパワーがもちろん備わっている。

そこは魔神ジーニー。さすがに強い。

(『ジャファーの逆襲』では、若干そのパワーが弱まってしまったようだが……)

ディズニーのジーニーは主人を嫌う

ランプの魔人といえど、人間のような心をもったジーニー。

つかえる主人にも好き嫌いが激しいようだ。

 

アラジンとは友達レベルまでになるが、ジャファーにランプを奪われたときは、

「ジャファー、ジャファー、がんばって。あんたが負けたら最高!」

というくらい、ジャファーを嫌っている。

というか、主人がジャファーになって初対面するときなんか、もう最初っから声色が変わって、イヤそうだ。

 

だが、そんなジーニーの気持ちに反して、主人の命令には絶対服従のジーニー。

「ごめん」と言いながらも、ジーニーは破壊的な行為を行ってしまう。

主人が言ったことには、反抗できないシステムなのだ。

ジーニーになったジャファー

ジーニーを奪われた中で、アラジンはなんとかジャファーと対決する。

アラジンの口車にのせられたジャファーは、自らを「ジーニー」にしてくれという願いを使う。

ジーニーにしてくれというのは、つまり「ランプの魔神」にしてくれという意味だ。

(「ジーニー」の意味については、後ほどまた解説する)

 

っていうか、ヘビに変身したときもそうだが、ジャファーは意外と乗せられやすい。

策略家で判断力もある頭の切れる男なのに、ムダなプライドの高さはまったく残念すぎる。

 

話はそれたが、「ジーニー」にしてくれといって、ジャファーは変身し、赤いジーニーが登場する。

ツムツムにも出てくる「魔人ジャファー」だ。

なかなかのド迫力で、ここからどんな攻撃をされるのか……!!

 

……と思った瞬間に、ジャファー専用のランプに戻されてジ・エンド。

ジャファーは「ランプの魔神」になったわけだから、専用のランプも当然そこに出てくる。

ずる賢いアラジンの勝利である。

自由になるジーニー

アラジンとジャスミンも結ばれ、ハッピーエンドで終わるディズニー映画『アラジン』

まだ1つ願いが残っていたアラジンは、約束通り、ジーニーを自由にしてあげる。

アラジン、いいやつだ。

 

金の腕輪(手錠のようなもの?)が取れて、晴れて自由の身となったジーニー。

最高にハッピーで、ワクワクしているジーニー。

カバンに荷物を詰め込み(詰め込む演出をし)、グーフィーの帽子をかぶって、旅立っていく。

さよならジーニー。

『ジャファーの逆襲』で、また会おう。

千夜一夜物語の「ジーニー」

と、ディズニー版の紹介が長くなってしまったが、ここからは原作を見てみよう。

 

『アラジン』の原作は、「千夜一夜物語」(アラビアンナイト)という説話集の中のひとつの話、『アラジンと魔法のランプ』だ。

『アラジンと魔法のランプ』で出てくるランプの精は、「鬼神(イフリート)」「魔神(ジーニー)」と呼ばれる。

そう、実は「ジーニー」はあの青いキャラクターの名前ではない。

「ジーニー」の意味は「魔神」である。

もともと、アラビア語で魔人を表す「ジン」という言葉があり、男を表すときに「ジンニー」と少し形を変える。

「ジンニー」を英語にしたのが「ジーニー(genie)」というわけだ。

つまり、ディズニーの「ジーニー」というのは、アラビア語で「男の魔人(魔神)」を表しているのである。

千夜一夜物語のジーニーは醜い奴隷だった

千夜一夜物語では、ジーニーはこんなセリフで登場する。

「ここに、あなた様の奴隷が控えておりまする。仰せあれ、何の御用でござりましょうか?私は空中を飛ぼうとも、地上を這おうとも、このランプの下僕(しもべ)でございます」

奴隷ときたか!

これまただいぶ固い感じの、ランプの精である。

「10000年間もじーっとしてたから、首ががっちがっちだわさ!」と言って出てくるディズニーのジーニーとは、正反対のノリだ。

 

さて、そんな千夜一夜物語のジーニー。

見た目はというと、「醜い大男」である。

ディズニー版ジーニーのような青い身体の、フレンドリーな感じではないらしい。

物語の中では、こんな描かれ方をしている。

まっ黒い黒人みたいな、大鍋のような頭をした、恐ろしい顔つきの、赤く、大きく、爛々とした眼の、途方もなく膨大魁夷な鬼神(イフリート)

なんだかすごそうだ……。

赤くて大きい鬼みたいなものなので、どちからというと「魔人ジャファー」に近い感じだろう。

鬼神とも呼ばれているだけのことはある。

さすが、夢を与えるディズニーとはちがって、原作はやはり怖いものなのだ。

指輪のジーニーもいる!?

千夜一夜物語には、ランプから出るジーニーのほかに、なんと指輪から出てくるジーニーもいる。

ランプの精ならぬ「指輪の精」である。

むしろ、物語の最初に出てくるのはこの指輪のジーニーのほうだ。

 

『アラジンと魔法のランプ』の物語では、ディズニー版と同じように、アラジンがとある洞窟にランプを取りに行く。

ジャファーのような「悪い魔法使い」にだまされて、取りに行かされるわけだ。

そこで、これまたディズニーと同じく、「ランプをよこせ!」と言われてしまうアラジン。

怖くなったアラジンは、ランプを持ったまま自分で洞窟の中に戻る。

キレた魔法使いは入口を自ら閉じて、そのまま帰ってしまう。

ランプは中にあるのに……。短気な男である。

 

さて、洞窟の中に閉じ込められてしまったアラジン。

ランプをこするかと思いきや、ここでこするのが「指輪」なのだ。

 

実はこの指輪、悪い魔法使いが自らアラジンに授けたもの。なぜ授けたのかはさっぱり意味不明。

だがこれのおかげで、指輪のジーニーに助けてもらうことができる。

 

ディズニーの『アラジン』と同じく、最初の願いは「閉じ込められた場所から抜け出すこと」

もちろん、アニメのようなチートではない。

きちんと “お願い” をして、出してもらうのである。

千夜一夜物語のジーニーの願いは無限

ディズニーのジーニーと同じく、主人の願いを叶えてくれる千夜一夜物語のジーニー。

だが、原作のほうでは、願いの制限は一切ない。

例外のルールもなければ、物理的にできないこともなさそうだ。

 

千夜一夜物語のジーニーが叶えてくれた願いは、だいたいこんな感じ。

  • ごちそうを用意する
  • 姫とその婚約者を夜中にベッドごと運んできて、一晩部屋に閉じ込める
  • 何十人もの奴隷を用意する
  • 豪華な服を着る
  • 豪華な馬を用意する
  • 豪華な宮殿を建てさせる
  • 窓に装飾をほどこす

奴隷を用意するあたりからは、ディズニーの『アラジン』と同じく、アラジン本人を金持ちの王子さまに見せるためのもの。

姫と結婚して、豪華な宮殿を新しく作って、一緒に暮らすのだ。

 

すべてはジーニーの力。

これらの願いを、どれも一瞬で叶えてしまう。

豪華な宮殿ですら、すぐに完成だ。

その点、ディズニーのジーニーより魔力がすごいのかもしれない……。

悪い魔法使いに奪われるジーニー

さて、クライマックスではディズニーと同じく、ジャファーのような悪い魔法使いにランプを奪われてしまう。

もちろん、千夜一夜物語のジーニーも新しい主人の言いなり。

友情を大事にするディズニーのジーニーとは違って、こちらは主人が誰であろうと関係ない。

なんの抵抗もない心変わりだ。

 

悪い魔法使いはジーニーを使って、なんと宮殿ごと自分の国に持って行ってしまう。

そんなことが一瞬でできてしまうのも、魔神ジーニーのパワー。

悪い魔法使いだって魔法使いのはずだが、そんなへなちょこ人間の魔法の出番なんてこれっぽっちもないのだ。

指輪ジーニーが大活躍

ランプを奪われてしまったアラジンだったが、指輪はまだ残っていた。

そう、指輪のジーニーを呼び出せるのである。

 

指輪をこすってジーニー召喚。

奪われてしまった宮殿と姫を戻すよう願うが、まさかの「ムリです」との答えが!

「おお、指環の御主人様、あなたの御注文は、だいたい私の縄張りではございません。なぜなら、地上でも、空中でも、水上でも、私はただ指環だけの下僕(しもべ)ですから。そして、その点はランプの下僕の管轄に属するので、残念ながら満足させて差し上げることができない次第でございます」

なるほど、どうやら「管轄」というものがあるらしい。

つまりは、ランプの精のほうが万能だということだろう。

 

しかし、アラジンを連れていくことはできる指輪の精。

宮殿と姫のところまで連れて行ってもらい、さらには「麻酔の粉」なるものも作ってもらう。

悪い魔法使いは麻酔の粉でぐっすり。あっけなくランプを取り返す。

ランプのジーニーが宮殿ごと運び戻してくれて、めでたく平和が訪れるのだ。

千夜一夜物語のジーニーはキレる!?

さて、平和な暮らしが無事戻って来たかと思ったアラジンと姫。

だが、最後の最後になんとジーニーがキレ出すのだ!

 

それは、とある聖女が、姫が子供を授かるためにしたアドバイスがきっかけ。

「巨鳥ロクの卵を取ってきて、ドームに吊るすといい」という謎のアドバイスに従うため、アラジンはランプからジーニーを呼び出す。

そして、ロクの卵を…とお願いしている最中に、ジーニーは突然キレるのだ!

「何を図々しく頼むのか。身分賤(いや)しいやつらのなかでも一番恩知らず者めが、おれが唯々諾々(いいだくだく)と尽くしてやったあらゆる骨折りにもかかわらず、今度は厚かましくもおれに、貴様の宮殿のドームにぶらさげるから、おれの至上の御主人ロク様の御子を取りに行ってこい、なんぞとぬかしやがるのだな」

……なんという変わりよう(笑)

ってか、ほかに御主人様がいるのか!しかも鳥!

むしろロクって何者だよって話だ(笑)

 

ちなみに巨鳥ロクとは、ロック鳥とも呼ばれるアラブ世界では伝説となっている巨大な鳥。

千夜一夜物語の有名な話『船乗りシンドバードの物語』に登場することでも有名だ。

まさかジーニーが伝説の鳥の奴隷だったとは……。

 

しかし、いきなり鬼のような姿のジーニーがこんなキレ方をしたら、さぞ怖いだろう。

しかも「恩知らず」とも言われてしまうなんて……それまでずっと淡々と願いを叶えてくれたジーニーだったが、やっぱり心はあったらしい。

千夜一夜物語でもディズニーでも、ジーニーが人につかえるのは疲れるのだ。

とはいえ、アラジンがきちんと事情を説明すると、ジーニーも元通りの性格に戻る。

 

ちなみに、ジーニーがキレるきっかけを作った聖女は、なんと悪い魔法使いの弟が化けていたというオチ。

アラジンがそやつの首を切り落として、本当にめでたしめでたしとなる。

ディズニーのジーニーとアラジンのように、千夜一夜物語でも、ランプの精ジーニーとアラジンは仲良しでいてもらいたいものである。

まとめ

ということで今回は、『アラジン』に出てくるジーニーを、ディズニーのアニメと、原作の千夜一夜物語とで比較してみた。

陽気な人気者のディズニー版ジーニーとは対照的に、千夜一夜物語のジーニーは怖い。見た目も、突然キレるところも怖い。

だが、魔法のパワーではおそらく千夜一夜物語のほうが上だ。

ランプの精と指輪の精、どちらもジーニーだが、ランプから出てくるジーニーのほうがはるかに力があるらしい。

「ジーニー」という名前は魔神の総称。ジーニーにも、いろいろな種類がいるのである。

ディズニーアニメと合わせて、原作もぜひ楽しんでみてほしい。

 

■参考・引用
完訳 千一夜物語〈9〉 (岩波文庫)
アラジン スペシャル・エディション [DVD]

 

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