今回は、不倫する女がとっても怖いグリム童話、KHM016『三枚の蛇の葉』をご紹介しましょう。
いじわるなまま母や魔女も多く出てきたりと、なにかと女が怖いグリム童話。
そんな怖い女に翻弄されることの多いグリム童話から、「不倫したあげく、夫を海に捨てる」エピソードを紹介します。
あまり世に知られていないお話かもしれませんが、よく考えると実は非常に過激で、残酷なグリム童話のひとつ。
それが、『三枚の蛇の葉』です。
生き埋めが結婚の条件
『三枚の蛇の葉』では、一人の貧乏な男と王女が結婚をします。
このときの、結婚の条件がとにかくひどい!
その条件というのは、
「王女が先に死んだ場合、夫は生きたまま王女と一緒に墓に入らなくてはいけない」
というもの。
要するに「生き埋めになれ」ということですね。
いったいなぜこんな条件になったのかというと、「愛する妻が死んでしまったら、夫はもう生きる意味がない」という王女の人生哲学があったから。
ずいぶん強烈な哲学です。
この男も王女と結婚した立派な王子であるのに、生きたまま墓に入らされるとは何ともひどい条件ですね……。
グリム童話の本文中にはさりげなく書かれていますが、よくよく考えれば「生き埋めになって自害しろ」ということです。
よくそんな条件をのんで結婚したものです。
それほど、男は王女に魅力を感じ、愛してしまったのでしょう。
王女が最期をとげるときは、自分も一緒にとなりで最期をむかえようという決意の表れですね。
蛇のおかげで生き返る
さて、王女は病気にかかって、夫より先に亡くなってしまいました。
約束は約束なので、夫は生きたまま王女の墓に入ることとなったわけです。
王女とともに、まさに男が自分から生き埋めになろうかという瞬間、どこからともなく「蛇」が現れます。
そして、蛇が王女の身体に近づいていったため、男がその蛇を切り刻んでしまいます。
しかしそこへ、別の蛇が現れ、葉っぱを乗せることで切り刻まれた蛇の身体を元通りにします。
こうして、男はその葉っぱに、「生命をよみがえらせる能力」があることに気づくのです。
そして、その葉っぱを王女の亡骸に乗せることで、男は王女を生き返らせることに成功しました!
本来ならば、そのまま2人は幸せに暮らしたといって、めでたしめでたしとなるところでしょう。
しかし、この話の本当に恐ろしいところはここからです……。
王女の不倫、そして夫を海へ
生き返った王女は、夫とともに船に乗って出かけることになります。
その頃にはもう、王女は心変わりしてしまっていて、夫のことはこれっぽっちも愛していませんでした。
こともあろうに、王女はその船を操縦していたキャプテンと、不倫関係になるのです。
せっかく生き返らせてくれたのに、ひどい仕打ちです……。
そして王女はなんと、彼女のために自ら生き埋めにまでなろうとした夫をジャマ者あつかいし、この世から葬り去ることを決めます。
この手段がまたなんともえげつない……。
夫が寝ている間に、王女はキャプテンをそそのかして、2人で夫の身体を持ち上げます。
そして、そのまま海へ放りこんでしまうのです。
愛する妻が生き返ったことを喜び、これから幸せに暮らしていこうと思っていた矢先、夫は何も知らないまま、不倫した妻に命を奪われてしまうわけです。
童話の淡々とした文章で書かれているからあまり実感がわきませんが、よくよく考えたら大変なサスペンスです。
さらに王女は、
「夫は途中で死んだことにすればいいわ。そうすればあなたが王子さまよ」
と、なんのためらいもなく犯罪を隠ぺいし、不倫相手に王位を与える画策まで行います。
まさにゲスです。
ですが、最後には海へ捨てられた夫の家来が蛇の葉っぱを使って、夫をよみがえらせてくれます。
そして、王女の卑劣な行いを王さまに報告。
王女は不倫相手とともに穴のあいた船に乗せられ、海に放り出されて死刑となります。
読んでいる側としては、スッキリしたオチなのかもしれません。
まとめ
今回は、王女が不倫して夫を海に捨てるという、ロイヤルファミリーに致命的なダメージを与えそうな大スキャンダルな物語をご紹介しました。
『三枚の蛇の葉』なんてファンタジーなタイトルからは、想像もできない話でしたね。
なにかと残酷なグリム童話の中の、隠れた怖い童話。気になる人は、ぜひ読んでみてください。
こんな話もタイトルからは想像できない怖さです↓