ディズニーアニメ『ピノキオ』の原作はグリム童話ではないですが、やはりちょっと怖いことで有名です。
「ピノキオ」と聞けば、ぱっと思いつくのはディズニー版だと思います。
しかしその一方、原作『ピノッキオの冒険』の怖くて残酷、ダークな雰囲気を味わってみるのもいかがでしょうか?
この記事では、ピノキオの原作のどのあたりが残酷なのか、少し詳しく見ていきたいと思います!
ディズニー版は「ピノキオ」、原作は「ピノッキオ」と表記しています。
ピノキオの原作情報
『ピノッキオの冒険』はイタリアの作家「カルロ・コッローディ」によって書かれた童話です。
1883年に出版されています。
もともとは、1881年にスタートした児童用雑誌の連載シリーズものでした。
それが、一冊の童話として、今でも読み継がれているわけですね。
2021年11月公開の『ほんとうのピノッキオ』など、実写の映画化にもなっています。
それでは、『ピノッキオの冒険』のあらすじと、怖くて残酷なポイントを紹介していきます!
『ピノッキオの冒険』のあらすじ
ジェペットはアントニオ親方にもらったしゃべる木ぎれで、ピノッキオという名の操り人形を作る。
ある日、いたずらっ子のピノッキオは、学校に行く途中で、怠け者の性格のせいで芝居を見ようと劇場に行き、金貨を5枚もらう。
帰ろうとしたピノッキオは、きつねとねこに「金貨を何倍にもできる」とだまされる。
一度はきつねとねこに木につるしあげてしまうピノッキオだったが、仙女にすくわれ、家に帰るようさとされる。
その帰り道にふたたびきつねとねこに出会い、結局ピノッキオはだまされて金貨を全部なくしてしまう。
さまざまな冒険をしたピノッキオは家に戻ると、仙女はいなくなっていた。
悲しみに暮れたピノッキオのもとへハトがあらわれ、ジェペットがピノッキオを探して船出しようとしていることを知る。
ピノッキオはジェペットを追いかけて海を泳ぐが、ある島にたどりつき、仙女と再会し、まじめに学校に通うようになる。
ある日、ピノッキオはいたずらな友だち「燈しん」に誘われておもちゃの国にたどりつく。
そこで学校にも行かずに遊んでいた2人はロバに変えられ、売り払われてしまう。
ロバになったピノッキオはサーカスでさんざんこきつかわれたあとに、海に捨てられ、その後大きなサメに飲みこまれてしまう。
サメのおなかの中でジェペットに再会したピノッキオは、必死に口から逃げ出し、弱ってしまったジェペットの看病をはじめる。
ピノッキオは改心してよく働くようになったので、仙女はピノッキオを人間の男の子に変えてやる。
『ピノッキオの冒険』の残酷なポイント
ピノッキオが受ける残酷な仕打ち
ピノッキオはジェペットや仙女やこおろぎの忠告を聞かないで、すぐに悪い誘いに乗ってしまうくせがあります。
そんなピノッキオが受ける仕打ちもかなり残酷です。
一番印象的なのは、ねこときつねに縄でしばられて木の枝につるされ、窒息するピノッキオ。
描写がリアルでかなり残酷です。
本来はここでピノッキオは息をひきとって、連載終了という感じでした。
しかし、編集者に残酷すぎるから続編を書くように忠告された結果、ハッピーエンドになったそうです。
ほかにも、お腹をすかせすぎて物乞いに行った家で、水を思いっきりかぶせられてしまうピノッキオ。
そのまま家に帰り、火鉢の上で寝てしまって足が燃えてしまいます。
また、魚だと間違えられて、小麦粉まみれになってフライにされそうになることも。
しまいには、ロバに変えられてサーカスでこきつかわれたあげく、海に放り投げられて毛や皮を魚につっつかれます(おかげでピノッキオは元の姿に戻れるのですが)。
このように、ピノッキオはことごとく痛い目にあうのです。
ピノッキオがこおろぎをつぶす
ピノッキオがあやつり人形になってまもなくのこと。
いたずらばかりするピノッキオを忠告する大きな「こおろぎ」がいます。
そうです、ディズニー版ではみなさんご存じの「ジミニー・クリケット」です。
原作ではそんなオシャレな名前はなく、こおろぎとして登場。
そして、ピノッキオの投げた木づちが頭に命中してつぶれてしまいます。
ディズニー版では今や誰もが知る有名な曲「星に願いを」をうたっていたり、最後までピノキオをサポートする大役をになうジミニー・クリケット。
なのに、原作のこおろぎはこんなにもすぐ、あろうことかピノッキオによって命を奪われてしまいます。
なかなか衝撃的なシーンですね。
ピノッキオは、以下のこおろぎの言葉にショックを受けて怒り、こんな行動をとってしまったのです。
「だって、あんたは、あやつり人形なんですもの、で、もっと悪いことには、あんたの頭は、木なんですもの。」
『ピノッキオ』(創元社)より
そのあと、コオロギは「幽霊」となって何回も登場し、めげずにピノッキオに忠告をくりかえします。
ねこときつねが痛々しい
ねこときつねはピノッキオをだます詐欺師のような存在で、物語の重要な悪役。
この2匹も、なかなか痛い目にあいます。
特に痛々しいのは、ピノッキオの金貨を奪おうとしたねこが手を噛みちぎられるシーンですね。
また、ねこは最初、目が見えない演技をしていましたが、最終的には本当に目が見えなくなってしまいます。
相棒のきつねにいたっては、自分のしっぽを切り落として売ってしまっているという始末。
毛も抜け落ちて、見ていられないほど悲惨な物乞いの姿になってしまいます。
不気味な動物たち
ねこときつね以外にも、気味の悪い動物たちがたくさん登場します。
例えば、ねこときつねに首をつるされて意識をなくしていたピノッキオを迎えにくるのは、棺をかついだ4匹の黒いうさぎです。
想像するとちょっとホラーですよね……。
また、ピノッキオは大きな恐ろしいヘビにも出会います。
そのヘビは、倒れたピノッキオを見て笑いすぎた結果、胸の血管を破裂させて息を引きとるといった無惨な最期を迎えます。
他にも、ピノッキオが金貨を増やせるとだまされた奇跡の原では、哀れな姿の動物たちがたくさん登場します。
毛がぬけた犬、毛をかられたひつじ、とさかをなくしためん鳥、羽をなくしたチョウなど。
このように、ピノッキオの物語に登場する動物たちは、すごく暗い雰囲気をかもし出しています。
ピノッキオの友だち「燈しん」のかわいそうな最期
最後に、いちばん残酷な目にあったともいえるのが、ピノッキオと同じ学校に通う友だちの「燈しん」です。
燈しんは、仙女の言いつけを守って家に帰ろうとするピノッキオを、おもちゃの国に一緒に行かないかと強引に誘います。
おもちゃの国には、学校も先生も本も存在しないといいます。
「朝から晩まで遊んで暮らすんだよ。それから晩に、寝どこにはいって、翌朝は、また同じことを始めるんだ。」
『ピノッキオ』(創元社)より
結局、おもちゃの国で5ヶ月過ごした燈しんもピノッキオも、ロバに変えられてしまうという運命は同じです。
しかし、ピノッキオは海に投げ込まれて元の姿に戻りますが、燈しんはロバに変えられたままなのです。
物語の最後のほう、ピノッキオがジェペットを養うため働きに行っていた農場で、過酷な労働をさせられて倒れている小さなロバに出会います。
その小さなロバは、ピノッキオの前で「ぼく、とうしん」と最後につぶやいて息を引き取ってしまいます。
たしかに燈しんはかなりのいたずらっ子でしたが、おもちゃの国に憧れるのは子どもであれば無理のない話です。
ピノッキオの「改心して人間の男の子になれる」というハッピーエンドと比べると、かなり残酷な仕打ちに思えますね!
まとめ
ピノキオの原作『ピノッキオの冒険』は、ディズニー版と比べるととてもダークな雰囲気で、残酷なシーンも目立ちます。
ピノッキオのいたずら度合いや、なかなか約束が守れない性格や怠けぐせなど、悪い面もかなり際立って描かれています。
そしてその分だけ、受ける仕打ちもかなりひどいものです。
「約束はぜったい守らなければいけない」といった教訓が、いやでも染みつきそうなお話ですね。
ディズニー版をはじめ、『ピノッキオの冒険』はさまざまな形で映像化されています。
ぜひ、それぞれの違いを楽しんでみてください!