グリム童話『フィッチャーの鳥』のあらすじや、物語の教訓・感想など関連する内容を詳しくお伝えします。
結末までネタバレしていますので、ご了承ください。
『フィッチャーの鳥』のあらすじ
むかし、ある魔法使いがいて、あちこち家をまわっては物ごいをして、かわいい女の子をさらっていた。
ある日、魔法使いは3人のきれいな娘のいる家にやってきて、物ごいをする。
1番上の娘が出てきてパンを渡そうとすると、魔法使いはその娘にすこしさわり、とたんに娘はかごの中に入ってしまった。
そして、魔法使いは娘をぜいたくなものがたくさんある自分の家に連れていき、娘のほしがるものをなんでもあたえた。
2、3日して、魔法使いは出かけるときに、娘に家のカギを渡す。
小さいカギで入って開く部屋に入ってはいけない、もし入ったら命をうばう、と娘に忠告した。
それと一緒に卵を1つ渡し、それを肌身はなさず持ち歩くようにいい、なくすと不幸になるぞとつけたした。
娘はそれを約束し、家の中の金と銀でかがやくすべての部屋を見てまわる。
そして、入ってはならないドアの前まできて、娘は入りたい気もちを抑えきれず、カギをまわして扉を開けてしまう。
すると、目に入ったものは血だらけの水槽で、中には殺されて切りきざまれた人間の体がころがっていた。
近くにはみがかれたオノがあり、娘はおどろいて持っていた卵を水槽に落としてしまう。
落とした卵を拾って、血をふきとろうとするが、どれだけふいても卵についた血のしみを消すことはできなかった。
魔法使いが帰ってきて娘にカギと卵を返すよういい、卵についた血のあとを見ると、娘の首を切り落として手足を切りきざみ、あの水槽に投げこんだ。
次は2番目の娘が同じように連れていかれ、魔法使いの家で1番目の娘とまったく同じ目にあい、殺されてしまった。
魔法使いは、つづいて3番目の娘を連れてきたが、その娘はとてもかしこく、魔法使いがカギと卵を渡して家を出ると、まず卵を大事にしまって、家の中をすべて見たあとに、入ってはいけない部屋に入る。
娘は大事な姉たちが殺されているのをみて、そのきざまれた手足や胴体をあつめてそろえると、2人の姉は生きかえり、3人は喜びあった。
魔法使いが戻ると、卵には血のあとがなかったので、おまえは試練に通ったので花嫁にしてやるという。
このようにして、魔法使いは3番目の娘の望むとおりにするようになった。
娘は、婚礼前に金のつまったかごを両親に届けるよう魔法使いに言った。
そして、部屋にかくしておいた姉たちをかごに入れて金でかくし、魔法使いを呼んで、自分は窓から見ているから途中で立ち止まってはいけない、と命じる。
魔法使いは疲れながらも両親の家にたどりつき、娘の入ったかごをとどける。
花嫁の娘は婚礼のしたくをしたあと、どくろに花輪をかぶせて窓の前へ持っていき、自分はハチミツの樽に入ったあと羽根ぶとんを切りさいてその上をころがり、鳥の姿となる。
娘は家を出て、何人かの婚礼によばれた客に出会うが、客たちは娘をフィッチャーの鳥だと思いこんだ。
最後に魔法使いと出くわすが、同じように魔法使いも自分の花嫁をフィッチャーの鳥だと思う。
窓のところのどくろを花嫁だと思って安心し、魔法使いは家の中にほかの客たちと入る。
そのとき、花嫁の兄弟と親戚が到着し、かれらは家の戸をすべて打ちつけてだれも外に出られないようにしてから、火をつけた。
こうして、魔法使いは仲間の悪党とともに、焼け死ぬこととなった。
『フィッチャーの鳥』の教訓・感想など一言コメント
残酷な話として有名な物語。
魔法使いの男が女の子をさらっていき、恐怖の惨劇が始まります。
『青髭』でもおなじみの「開けてはいけない」ネタが登場する話でもあります。
しかし、さらわれた女の子はなかなかに賢く、最終的には魔法使いのほうがやられてしまいます。
不運な状況におちいっても、切り抜ける知恵は大切ですね。
『フィッチャーの鳥』の基本データ
収録ナンバー
KHM046
原作タイトル(ドイツ語)
Fitchers Vogel
英語タイトル
Fitcher’s Bird
日本語の別タイトル
- 「まっしろ白鳥」
など
収録版
初版から7版までずっと