グリム童話『強盗のおむこさん』のあらすじや、物語の教訓・感想など関連する内容を詳しくお伝えします。
結末までネタバレしていますので、ご了承ください。
『強盗のおむこさん』のあらすじ
むかし、1人の粉屋には美しい娘がいて、粉屋はその娘がよい結婚をしてくれたらと望み、ちゃんとした人があらわれたら、その人に娘をやろう、ときめた。
そこに1人の求婚者があらわれ、見るからにお金もちそうで、粉屋はその人になんの文句もつけようがなく、娘を花嫁にやる約束をする。
ところが、娘はそのお婿さんが好きになれず、かれを見たり考えたりするたび、とてもおそろしい気持ちになった。
あるとき、お婿さんは娘に、自分は遠くはなれた深い森に住んでいると話す。
そして、娘が道に迷わないよう、灰をまいておくので、日曜に家にくるよう招待をする。
日曜になり、娘はとても不安でたまらなくなって、道にしるしをつけるために、エンドウマメとレンズマメをたくさんポケットにいれて出かけた。
娘は森の入り口で灰をみつけるが、すすむごとにマメを道の左右にまいた。
1日かかって森のまん中にたどりつくと、その暗い中に1軒の不気味な家をみつける。
家の中に入ると、中にはだれもおらず、そこに1羽の鳥が、帰れ、ここは人殺しの家だ、と叫んだ。
娘はそのまま部屋から部屋へと歩いたが、誰もみつからず、地下室へおりていく。
すると、そこにはとても年をとった女がいて、娘に、ここは人殺しの巣窟で、おまえは死神と結婚をすることになる、かれらは人食いだ、と話す。
そして、娘を樽のうしろに連れていき、動かないように言いつけ、盗賊たちが寝たらいっしょに逃げだそう、という。
まもなく、とてもおそろしい盗賊たちがもどり、1人の若い娘を連れていて、連中はその娘に白、赤、そして黄色のワインを3杯のませる。
すると若い娘の心臓は破裂してしまい、連中はその娘の服をひき裂いて、からだを細かく切りきざみ、塩をふりかける。
樽のうしろで、花嫁はふるえおののいた。
盗賊たちの1人が、殺された娘の指に金の指輪をみつけ、その指輪はすぐにはずせなかったので、指を切り落とす。
すると、その指は高くはね上がり、花嫁のひざの上に落ちる。
盗賊たちはそれを探しにかかるが、おばあさんが、探すのは明日にしてとりあえず食事をしろ、という。
盗賊たちはそのまま食事をはじめるが、おばあさんはかれらのワインに眠り薬をいれたので、連中はそのまま地下室で眠りはじめた。
花嫁は連中の寝ている間をこっそりすりぬけて、おばあさんといっしょに人殺しの家から逃げだした。
道しるべの灰は風で吹きはらわれていたが、まいてあったマメが芽を出していて、月明かりの中、道をおしえてくれた。
朝になって家に戻ると、娘は父親にこれまで起きたすべてのことを話した。
婚礼の日になり、粉屋は親戚や知り合いの人たちみんなを招待してあった。
式では花嫁はひとことも話さなかったので、お婿さんが、何か話すようにと花嫁にいう。
花嫁は、1つの夢をみたといって、森の中で、ある人殺しの家にたどりついた、と自分の身にふりかかったことを話しはじめる。
そして、若い娘から切り落とされた金の指輪のはまった指が、自分のひざの上に落ちた、というところで、花嫁はその指をそこにいる人たちに見せる。
盗賊は顔をまっ青にして、逃げだそうとするが、客たちがしっかりつかまえて、裁判所にひき渡す。
盗賊たちは1人残らず、処刑された。
『強盗のおむこさん』の教訓・感想など一言コメント
グリム童話初版収録の『青髭』と『ヘンゼルとグレーテル』を足したような出だしで始まる童話。
強盗たちが若い娘を連れてきては、どんどん手にかけていくけっこう残酷な話です。
お父さんが金目当てで、娘の結婚相手に選んだ男が、なんと強盗集団の一人だったというオチ。
娘はうすうすそのあやしさに気付くわけですが……やっぱり女性の直感は働くのでしょう。
その恐ろしい強盗たちは「人を食う」とも言われたりしていて、けっこう本格的に怖い物語です。
しかしながら、連れていかれる主人公の娘は、見事強盗たちを処刑台に送ることになります。
女性の活躍もしっかり見て取れる、ホラー作品です。
『強盗のおむこさん』の基本データ
収録ナンバー
KHM040
原作タイトル(ドイツ語)
Der Räuberbräutigam
英語タイトル
The Robber Bridegroom
日本語の別タイトル
- 「盗賊のお婿さん」
など
収録版
初版から7版までずっと
2版から別の話が混ざっている