グリム童話『歌う骨』のあらすじや、物語の教訓・感想など関連する内容を詳しくお伝えします。
結末までネタバレしていますので、ご了承ください。
『歌う骨』のあらすじ
むかしある国では、イノシシが畑を荒らし、家畜を殺し、きばで人間を引き裂いたりするので、人々はたいへん悩まされていた。
王さまは、災いから国を救ったものにはたくさんのほうびをやるとのおふれを出したが、誰もこのおそろしいイノシシが住む森に近づこうとするものはいなかった。
ついに王さまは、イノシシを退治したものは、王さまのひとり娘と結婚してもよいというおふれを出した。
この国には2人のまずしい兄弟が住んでおり、悪知恵がはたらく兄は高慢さから、むじゃきでのんびり屋の弟は善意から、それぞれ冒険を受けて立つことを名乗りでた。
王さまは、確実にイノシシをとらえるため、それぞれ森の反対側から入るよう2人にいったので、兄は西から、弟は東から森に入ることとなる。
弟は森をしばらく行くと、1人のこびとにであった。
こびとはそのきれいな心をみぬいて、弟に黒いヤリをあたえ、それを持っていればイノシシがきても大丈夫だと告げる。
弟はこびとに礼をいって、ヤリをもって恐れずにすすむと、まもなくイノシシが自分に突進してくることに気づいた。
弟はあわてずにヤリをイノシシにつきつけると、イノシシはそのまま突進してきたので心臓がまっぷたつになり死んでしまった。
弟はそのイノシシを肩にかついで王さまに届けようと、森の反対側から帰ろうとした。
そこには一軒の家があり、兄はその中で一杯のんで景気をつけているところだった。
兄はイノシシをとらえた弟を見て、妬ましいきもちになり、悪いことをたくらんで弟に休むよう話しかけた。
弟は何のうたがいもなく、兄にあったことを全部話し、兄は弟を日が暮れるまで引きとめて、いっしょに出かけた。
夕闇のなか、小川の橋まできて兄は弟を先に行かせて、まん中で後ろから殴りつけ、弟は川に落ちて死んでしまった。
兄は弟を橋の下にうめて、イノシシをかついで王さまのところに戻り、自分がイノシシをとらえたことにして、兄は王女と結婚することになる。
弟が帰ってこないことに対しては、どこかでイノシシに体を引き裂かれたのだろうといってみんなを信じさせた。
時がたったある日、1人のヒツジ飼いが、あの橋の下でまっ白な骨を見つけた。
それを笛の吹き口にしようと拾い、けずって吹いてみると、その骨は歌いはじめた。
骨が歌うことには、その骨は兄に殺された弟の骨で、兄は自分を橋の下にうめてイノシシを横どりし、王女さまと結婚したのだということだった。
ヒツジ飼いは、そのふしぎな笛を王さまに届けると、骨はまた同じ歌を王さまの前で歌い、王さまは何があったのかがよくわかった。
そこで、橋の下を掘らせると弟の骨がぜんぶ出てきたので、言いのがれできなくなった兄は罰として袋の中に入れられて、生きたまま水に沈められ、おぼれ死ぬこととなった。
殺された弟の骨は、教会の墓地のきれいなお墓に入れられて、安らかに眠った。
『歌う骨』の教訓・感想など一言コメント
隠れた残酷な童話。
ガイコツが歌うシーンは、小学生にはかなりのホラーでしょう。
実は日本にも、『歌い骸骨(うたいがいこつ)』という似たような話が鹿児島県に伝わっています。
教訓としては、やはり「嘘をつくと罰が当たる」ってところでしょうか。
誰も見ていないようでも、悪いことをすれば明るみに出るということです。
真面目な弟がとっても無念な話ですが……。
今回のヒーローは、骨を拾った羊飼いでしょう。
何の権力もない羊飼いが骨を拾ったことにより、兄の犯行がバレて、国王になることを防いでくれました。
逆に言えば、兄を処刑に追い込んだのも羊飼いということになります。
兄のガイコツに、羊飼いがノロわれていないことを祈るばかりです。
『歌う骨』の基本データ
収録ナンバー
KHM028
原作タイトル(ドイツ語)
Der singende Knochen
英語タイトル
The Singing Bone
日本語の別タイトル
- 「唄をうたう骨」
など
収録版
初版から7版までずっとだが、2版から少し話が変わっている