グリム童話『忠臣ヨハネス』のあらすじや、物語の教訓・感想など関連する内容を詳しくお伝えします。
結末までネタバレしていますので、ご了承ください。
『忠臣ヨハネス』のあらすじ
王様の忠臣であったヨハネスは、王が亡くなってから息子につかえるようになる。
王は息を引き取る直前、ヨハネスに「王子には城の中をすべて見せてやってくれ。ただし、長いろうかの先の最後の小部屋だけは見せてはいけない。黄金の屋根のお姫さまの絵がかくしてあるのだ。王子がそれを見たら、姫への激しい恋心を抱き、気絶してしまうだろう」と言い残した。
だがあるときヨハネスは、絶対見せてはいけないと言いつけられていた扉の中を、新しく王になった息子に見せてしまう。
そこには、父上だった王が生前いい残した通りに、美しい金の館の王女の肖像画があった。
若き王はたちまち王女に惚れてしまい、ヨハネスを連れて王女が実際に住む金の館へと出向いていった。
金の館に着くと、ヨハネスは商人のフリをして、お姫さまに近づいた。
たくさんの金を見せて姫を喜ばせ、船の中にはたくさんの金を持った主人が待っていると言い、姫を船へと連れていく。
若き王さまは本物の姫を見ると、その美しさにいっそう胸が張り裂けそうな想いになった。
王さまが姫を案内している間に、ヨハネスは船を出していた。
そのまま、姫は王さまとヨハネスに連れ去られた状態となった。
航海の最中に、ヨハネスは3話のカラスの声を聞いた。
ヨハネスは、カラスの話す言葉をわかっていた。
あるカラスは、ヨハネスたちが陸に着いたとき、馬が王さまめがけてやってきて、王さまを乗せて空へと舞い上がり、もう二度と姫とは会えなくなるだろうと言う。
助かる方法は、ほかのだれかが馬の手綱にかけてある鉄砲を取り出して、馬を撃ち殺すこと。
また別のカラスは、王さまと姫が城に入ると、そこに硫黄とタールでできた花婿用の服が置いてあり、王さまがそれを着ると骨の髄まで焼かれてしまうと言う。
助かる方法は、ほかのだれかが手袋をして、その服を火の中にほうりこんでしまうこと。
また別のカラスは、結婚式のダンスで姫が真っ青になって倒れると言う。
助かる方法は、ほかのだれかが右の乳房から血を3滴吸い取り、吐き出すこと。
もし、これらのことを王さまに知らせたら、知らせた者は石になってしまうと言われていた。
ヨハネスは、王さまにこれらの危険を知らせることなく、すべて自分がひそかに対処をする。
しかし、それを無礼な行動とみられてしまい、牢屋にぶちこまれ、死刑判決がくだされてしまう。
処刑台で、最後の最後に真実を王さまに伝えると、王さまから恩赦が与えられたが、ヨハネスは石になってしまった。
王さまは、嘆き悲しんだ。
それから時はたち、お妃となった姫は双子を生んだ。
石となったヨハネスは、ヨハネスを見てため息をつく王さまにこう伝えた。
「あなたがこの世で一番愛しているものをささげてくださるなら、私は生き返ります」
その言葉を聞き、王さまは自分の子どもたちの首をはねた。
ヨハネスには命が戻り、さらに子どもたちの首をくっつけて、傷口に子どもたち自身の血を塗ると、子どもたちも生き返った。
こうして、みんなが幸せに暮らした。
『忠臣ヨハネス』の教訓・感想など一言コメント
王に忠誠を誓う家臣の話。
ヨハネスの人間味と誠実さが、この話の最大の魅力でしょう。
ヨハネスは、亡くなった王の代わりに、その息子(次の王)にもつかえることに。
父親の言い残した言いつけを守るなど、父親代わり的な役割を果たしています。
しかし、誤って見せてしまった美しい王女の絵のせいで、若き王様は恋をしてしまいます。
その王女に近づくため、ヨハネスは商人のフリをするわけですが、やはりこういう点でもしっかりと王様の役に立っていますね。
バットマンと執事アルフレッドのような関係でしょうか。
そしてヨハネスは、危険な状況をすべて一人で対処します。
そのせいで、牢屋に入れられてしまうヨハネス。
最後に、真実を伝えて石像になるシーンは、なかなか感動的な場面ではないでしょうか。
有名な映画監督に、ぜひ本気で実写化してほしいような物語です。
最後には、石像になったヨハネスも生き返って、めでたしめでたし。
信じる人には、しっかりと忠義を尽くす。
そして、王様はそれに「真心」を持ってこたえる。
そんな人間の信頼関係が読み取れる童話です。
『忠臣ヨハネス』の基本データ
収録ナンバー
KHM006
原作タイトル(ドイツ語)
Der treue Johannes
英語タイトル
Faithful John
日本語の別タイトル
- 「忠実なヨハネス」
など
収録版
2版から7版まで