グリム童話がモチーフとなった映像作品は数多くありますが、今回はその中でも特にグリム童話の世界を楽しめる海外ドラマを紹介したいと思います。
アメリカはもちろんのこと、日本でも絶大な人気となった『GRIMM / グリム』です。
『GRIMM / グリム』は、2011年から2017年まで(日本では2013年から2018年まで)に全6シーズンにわたって放映されました。
『GRIMM / グリム』はそのタイトルが示すように、グリム童話の世界観がみっちり反映されていて、きれいに現代の世界とリンクしています。
怖いグリム童話が好きで、当サイトを訪れるあなたなら、見て損はない一作ですよ。
ということで、このページでは『GRIMM / グリム』の魅力について、ご紹介していきます。
なお、今回の記事はまだ見たことのない方に向けて書いているので、過度なネタバレはしていません。これから見ようと思っている方も、安心して読み進めてください。
『GRIMM / グリム』は大人向けのダークファンタジー
『GRIMM / グリム』の作品ジャンルとしては、「ダークファンタジー」だとうたわれています。
ダークなファンタジーなので、どちらかというと大人向けの話です。
むしろ、大人が見て楽しめるものですね。怖いグリム童話が好きな人にはおすすめできる、ダークな作品です。
実際、けっこう画面に張り付いて見ていると、ホラーのような描写にちょっと驚くこともあります。
なので、ホラーが苦手すぎる人にはあまりおすすめできません(事実、ちょっと怖くて見られないという人もいます……)。
「犯罪系×ファンタジー」という、エンタメとしては非常に興味をそそられるジャンルになっています。
毎回の話にグリム童話のモチーフが使われるため、元のグリム童話を知っていれば、楽しさは倍増です!
「グリムの末裔」という設定の刑事
このドラマの主人公ニックは、アメリカはオレゴン州で悪とたたかう刑事です。
相棒のハンクとともに、日々、殺人事件の解決にいそしんでいます。
そしてこの刑事、なんとグリム一族の末裔(まつえい)なのです。
「ん?ご先祖様がグリム兄弟…?」
と思われるかもしれませんが、それだと童話を集める人を描くただのヒューマンドラマになってしまいそうなので、ちょっと違います。
グリム一族といっても、ただ単にグリム兄弟の子孫というわけではありません。
『GRIMM / グリム』の中で言うグリム一族は、魔物を倒す一族として描かれています。
グリムの先祖たちが魔物たちを倒してきて、それを語り継いだのがグリム童話、という架空の設定です。
“Grimm” という単語で、「グリム一族」という意味を表すようですね(ちなみに可算名詞になっていて、主人公ニックは “a Grimm” と言われます)。
グリム一族の末裔で、魔物ハンターで、刑事。
なかなかに惹きつけられるキャラクター設定ですね。
ドラマは一話完結型で進みます。
よくある刑事モノのように、毎回の話で何かしら犯罪が起こり、犯人を捜していく形式です。
グリム一族の末裔、という設定がなければ、完全に刑事ドラマですね。
さて、上でさらっと書きましたが、問題は「魔物って何!?」という話です。
「ヴェッセン」と呼ばれる魔物
『GRIMM / グリム』に出てくる魔物は、「ヴェッセン(Wesen)」と呼ばれています。
Wesenはもともとドイツ語で「本質、存在、核心」などといった意味(英訳だとbeingやcreatureなどの意味)で、ドラマ内では魔物をさす固有名詞になっています。
ちなみに、ドイツ語発音だと「ヴィーズン」って感じです。
『GRIMM / グリム』のおもしろいところは、グリムの末裔である刑事ニックと、このヴェッセンたちとの戦いです。
「グリム一族 vs 魔物」という図式ですね。
ヴェッセンたちは、ふだんは人間の姿をしています。
が、ふとしたときに魔物の姿になり、人間を襲ってきます。
この隠れた普通の人間の中に、魔物の姿を見ることができるのが、ニックの特殊な能力です。
ドラマの中で起こる事件の犯人は魔物ヴェッセンであり、それをニックが追っていくという感じですね。
つまり、ふだんは普通の人間として生活しているけれども、襲うときは魔物の姿で襲うわけです。
突然キバをむく、ヴァンパイアのようなイメージです。
魔物というとかなり狂暴で怖いものなし!のように思われそうですが、実はヴェッセン側としても、どうやら「グリム一族」が怖い(やっかいな存在?)らしいです。
一族同士でいがみ合っている感じで、この駆け引きがまたおもしろい!
この辺については、第1話で登場する「良い」ヴェッセンのモンローが解説してくれます。
モンローはもともと悪いオオカミでしたが、人間でいうところのベジタリアン(菜食主義者)であり、人間を襲うことはやめています。
グリム一族を忌み嫌いながらも、なんだかんだでニックを助けてくれるなかなかチャーミングなやつです。
『GRIMM / グリム』を見始めたら、ぜひモンローの解説に耳を傾けてみてください。
(詳しくは、後ほど主要キャラクター紹介でもお伝えします)
「魔物」についての書物
そしておもしろいのが、『GRIMM / グリム』の中にはこの魔物について細かな解説がなされた書物が登場します。
ニックはこれを参考にして、魔物についての見識を深めていきます。
『ハリーポッター』でいうところの、『幻の動物とその生息地』(Fantastic Beasts & Where to Find Them)のようなものでしょう。
一瞬、グリム童話を読んでいるのかと思えてきますが、これはあくまでドラマ内のオリジナルの書物。
ヴェッセン事典のようなものだ。
この本は、200年前にグリム一族が書き始めたという設定になっています。
グリム童話も、初出版から200年以上の時を経ているので(初版は1812年出版)、うまいことリンクされているようですね。
グリム童話はグリム兄弟が「メルヘンを集めたもの」ですが、ドラマの中では「出会った魔物の情報を集めたもの」として描かれます。
ちなみに、その本で描かれているイラストは、なかなか昔の童話感が出ていて、絵本好きにはたまらないかも?
『不思議の国のアリス』の原作イラストと似ている印象です。
全部読んでみるとおもしろそう……。
『GRIMM / グリム』とグリム童話の関係
『GRIMM / グリム』の中では、「グリム童話=魔物の詳細を語り継いだもの」です。
ドラマでは魔物が中心になって描かれるため、毎回のエピソードにそのモチーフとなる動物が存在します。
その話のキーワード(キーアニマル?)的なものです。
そして、各エピソードのオープニングでは、そのモチーフとなった童話の一節が引用されます。
たとえば、オオカミがモチーフの回では、オオカミの出てくるKHM026『赤ずきん』から引用されたりします。
エピソード視聴後には、モチーフとなった童話に少し目を通してみると、より『GRIMM / グリム』の世界を楽しめるはずです。
『GRIMM / グリム』の主要キャラクター紹介
それでは、主要なキャラクターについて簡単に紹介します。
●ニック・ブルクハルト(役:デヴィッド・ジュントーリ)
『GRIMM / グリム』の主人公。
ポートランド市警の殺人課に所属する若い刑事。
物語のかなめとなる、グリム一族の末裔です。
人の顔が獣のように見えることに違和感を覚えていたものの、グリム一族のことは知りませんでした。
同じく一族であるマリーおばさんからそのことを告げられ、次第に自分は何者なのかを理解していきます。
魔物ハンター初心者といった感じですね。
何気にファミリーネームはドイツ人っぽくなっています。
●モンロー(役:サイラス・ウィアー・ミッチェル )
ヴェッセン(魔物)であり、ブルッド・バッドと呼ばれるオオカミ種族の一人。
けれども、もう悪さはしないと改心していて、ニックに情報提供をしてくれるいいやつです。
ふだんはピラティスに励み、人間を襲わないよう努力しています。
ちなみに、モンローを演じるサイラス・ウィアー・ミッチェルは、海外ドラマファンならきっと知っているであろう、『プリズンブレイク』の名脇役、ヘイワイヤーです。
どちらも憎めない感じをうまく醸し出している、個性派俳優ですね。
●マリー・ケスラー(役:ケイト・バートン)
グリム一族であり、ニックのおばにあたる人物。
ニックにとっての唯一の身内。
ニックがグリムの末裔であることを告げ、使命を言い渡す重要人物です。
ちなみに、グリム兄弟にたくさんの童話を伝えた女性の一人に、マリー・ハッセンプフルークさんという人がいます。
グリム兄弟にとっての「マリーおばさん」ですね。
●ハンク・グリフィン(役:ラッセル・ホーンズビー)
ニックの相棒の刑事。
なかなかしっかりしていて、いい友人といった感じ。
ちなみに、ファミリーネームのグリフィンは、鷲の翼をもち、ライオンの下半身がある伝説の生き物。
グリム童話にも、KHM165『怪鳥グライフ』という話があります。
●ジュリエット・シルヴァートン(役:ビッツィー・トゥロック)
ニックの妻。
獣医をしています。
まとめ
今回はグリム童話好きならきっと楽しめる海外ドラマ 『GRIMM / グリム』 をご紹介しました。
グリム童話に関連した映像作品の中でもおすすめなのが、この『GRIMM / グリム』です。
普通に刑事モノとしてもおもしろいうえ、その中にダーク・ファンタジーの要素が散りばめられてくるので、ちょっと怖い、だけどホラーまではいかないくらいのドラマが見たければ、かなりおすすめです。
サスペンス好きにも、ファンタジー好きにもピッタリですね。もちろん、グリム童話の怖い部分や、大人な部分が気になっている方には、ぜひ見てほしい一作となっています。
今夜のリラックスのお供に、『GRIMM / グリム』のダークな世界に浸ってみてはいかがでしょうか?