【閲覧注意】『子どもたちが屠殺ごっこをした話』に見る無邪気な残酷さ

【閲覧注意】無邪気な残酷さの『子どもたちが屠殺ごっこをした話』

今回はグリム童話初版にある、ものすごく残酷な子どもたちの話を紹介しよう。

その名も、『子どもたちが屠殺ごっこをした話』だ。

見るからにヤバそうなタイトルだが、実際の話もかなりヤバい。こんな話、グリム童話にあっていいのかと思うくらいヤバい。

ヤバすぎて、グリム童話初版には収録されていたが、第2版からは削除となっている。21番目の『灰かぶり(シンデレラ)』の次、22番に入っていた話だ。

削除された理由はもちろん「子ども向きではなかったから」。シンデレラの次にこんな話を読んだら、夜も眠れなくなるだろう。

いったいどんな話だったのか、その残酷さを見ていってみよう。

 

なお、過激な内容なので、閲覧には十分注意してほしい。

子どもたちが屠殺ごっこをした話 パート1

この話は、2つのパートに分かれている。

第1の話では、西フリースラントのフラネッカーという町で、子どもたちが遊んでいるところから始まる。フリースラントは、現在はオランダ北部にある州の名前だ。

その町で、5、6人の子どもたちが遊んでいる。

ここまでは普通だが、問題はその内容。やっている遊びは、タイトルにもある「屠殺ごっこ」だ。

 

屠殺(とさつ)とは、家畜動物の命を奪うこと。つまり、牛や豚を食用の肉にすることだ。

それをマネた遊びをするにあたって、子どもたちは

  • 肉屋
  • 料理番
  • 家畜の豚
  • 料理版の下働き

という役になりきることになる。

 

それから、やることはいたってシンプル。

肉屋が豚を食肉にするそのシーンを再現するのだ。

 

この子どもたちは、「ごっこ」ではなく、実際にその場面を忠実に作り上げてしまう。

つまりどうなるか。

なんと、肉屋役の子が豚役の男の子の咽(のど)を、ナイフで切ってしまうのだ。

 

その後、料理版の下働き役の子が、その血を受け止めることになる。

これで、この危険な遊びは終了である。

 

その一瞬の場面は、こんな感じで描かれている。

そして申し合わせ通りに、肉屋が豚の役の男の子につかみかかって、引き倒し、小さなナイフでその子の咽を切り開きました。料理番の下働きが、自分の小さな器で血を受け止めました。

 

「申し合わせ」があったわけだから、アクシデントではない。

豚役の子どもは、どんな気持ちだったのだろう。

 

その後、その場を通りかかった市参事会員がこのことを市長に報告し、肉屋役の子どもは裁判にかけられることになる。

だが、子どもが無邪気な気持ちだったと裁判長もわかっていたので、判決は子どもの選択に任せられることになる。

その選択とは、

  • 赤いりんご
  • 金貨

の2つを差し出して、どちらを取るかということ。

りんごを取った場合は無罪となり、金貨を取った場合は死刑になるとされていた。

 

その無邪気な男の子は笑いながらりんごを取って、何の罪もないまま話は終了する。

自分のやったことには、何の反省もない(というか、大変なことをしてしまった自覚がないのだろう)。

子どもの無邪気さがものすごく恐ろしい、かなり残酷な内容である。

子どもたちが屠殺ごっこをした話 パート2

第2の話は、お父さんが豚をつぶすシーンを見て、子どもたちがマネをするという流れだ。

2人の兄弟がそれぞれ、

  • 肉屋

の2役に分かれることになる。

「おまえは豚におなり。ぼくが肉屋になるから」

豚になったのが弟のほうだ。

 

そして、第1の話と同じく、兄がナイフで豚役の弟の咽(のど)を刺してしまう。

ここまでなら、第1の話と似た感じで、終わっていただろう。

 

だが、本当にエグいのはここからだ……。

 

実はこの兄弟にはもう一人、末の弟がいて、お母さんがその子をたらいでお湯につかわせていた(お風呂のような感じ)。

そのお母さんは、2人の兄弟が起こした参事を目撃する。それはもう、ワケがわからなくなってしまっただろう。

 

それと同時に、怒りの念に取りつかれることになる。

お母さんは弟の咽からナイフを抜くと、あろうことか、そのナイフを兄の心臓に刺してしまうのだ。

そして、何が起こったのかを見ると、その子の咽からナイフを抜き取り、怒りのあまりに、肉屋をしていたもうひとりの子の心臓にナイフを刺してしまいました。

子どもたちの悲劇に、母が発狂してハチャメチャになってしまうわけだ。

 

さらに、悲劇はまだまだ続く……。

 

母が事件を起こしている間、放置されていた末っ子が、たらいで溺れてしまうのだ。

こちらは、完全にアクシデント。

 

さらに、これを見た母親がまたまた発狂してしまい、ついには自分で首をくくってしまうことになる。

自責の念に押しつぶされてしまったのだろう。

 

さて、父親はどうなっているのか。

 

父親は畑仕事をしていて、この悲劇の場面に返ってくることになる。

そして、起こった大惨事を目にして、悲しみのあまりに息を引き取ってしまう。

こうして、「一家全滅」してしまうわけだ。

 

短い話ながらも、これでもかというくらいに残酷に仕上げた童話である。

初版で批判を浴び、削除されるのもムリはないだろう。

残酷な中の教訓

さて、パート1もパート2もかなり残酷な『子どもたちが屠殺ごっこをした話』

こんな残酷な話を、わざわざグリム兄弟(特に兄ヤーコプ)が入れた理由は何だったのか。

 

この話に教訓を見出すとすれば、読む人に命の大切さを教えることだろう。

残酷な話であるがゆえ、もしこの話を子どもたちが読むならば、子どもたちはその残酷さを知ることができる。

「死」というものを、身近に感じさせることができるわけだ。

 

さらにいえば、普段食べている豚だって、命をいただいているのと同じこと。

そういう意味でも、命にもっと関心を持ってもらいたかったのではないだろうか。

 

特にパート2の一家全滅のくだりなんかは、本当に悲劇でしかない。

ささいな遊び心からでも、「命を粗末に扱うと大事件に発展してしまう」という教えも見て取れる。

 

なかなかにエグい話だが、ただただ残酷で終わらせてしまっては、それこそ残酷なだけで終わってしまうだろう。

残酷な中にも教訓を見出すことで、この童話にも意味が生まれるわけだ。

まとめ

今回は、グリム童話初版の中でもかなり残酷だと思われる『子どもたちが屠殺ごっこをした話』を紹介した。

本当は怖いグリム童話が好きな人なら、一度は目を通しておきたい残酷な童話である。

子どもの無邪気さが恐ろしい悲劇を招いた、リアルに背筋の凍りそうな内容だ。

 

きっと教訓もあったのだろうが、過激すぎる内容に隠れてしまったのだろう。

気になる人は、ぜひ本文をチェックしてみてほしい。

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■グリム童話初版で残酷な話といえば……↓

⇒グリム童話から削除された『青髭』がやばい

⇒『ほうちょうをもった手』は、いろいろ残酷すぎてグリム童話から削除

 

■引用・参考
初版グリム童話集(1) (白水uブックス 164)

 

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