ねずの木の話という首が転がるグリム童話がホラーすぎて怖い

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ねずの木の話という首が転がるグリム童話がホラーすぎて怖い

『ねずの木の話』を聞いたことがあるだろうか?

木が主役となって、あなたをホラーの入り口へと誘い込む、まさしく「怖い童話」のひとつだ。

グリム童話の中でも、個人的にはトップクラスにホラーでエグい話だと思っている。

ハリウッドがシリアス路線で本気の実写化をしたら、おそらくR18作品になるのではないか。

今回は、そんな怖い木の話、KHM047『ねずの木の話』を紹介しよう。

目次

怖すぎるまま母のいじめ

この物語には、まま母が登場する。

『白雪姫』や『シンデレラ』など他のグリム童話に登場するまま母の例にもれず、まま子をいじめる。

もはやグリム童話の定番だが、そのいじめが強烈すぎて怖い。

自分の子ども(女の子)がかわいくて仕方がないまま母は、前の奥さんと旦那の間の子ども(男の子)を邪魔に思う。

いつも家の財産を全て娘にあげたいと考えていると、彼女の心に悪魔が宿ってしまう。

そして、このまま母のいじめはまさに「悪魔がかり」なのだ。

まま母は男の子に平手打ちをくらわしたり、つきとばしたり、ありとあらゆる方法でダメージを与える。

たとえば、家の端から端まで、男の子を蹴飛ばしたりするのだ。

いったいどんな脚力をしているのだろう。

お金持ち設定なので、家もさぞかし広いはず。

その家中を蹴りまわされるのだから、男の子にしては相当のダメージだ。

しかも、軽く蹴り飛ばせるほど男の子の身体は小さいため、蹴られていた時期は赤ん坊の時からだと思われる。

ひどい。

男の子が学校に通いはじめてもいじめは続いていくが、いじめの日々は最悪な形で終わりを迎える。

ある日、学校から帰って来た男の子に、まま母が悪魔のような笑顔で尋ねる。

「ねえ、おまえ、リンゴがほしいかい」

何も知らない男の子がリンゴの箱にかがみこみ、リンゴを取ろうとしたその瞬間。

バタン!

まま母は、ものすごい勢いで箱のふたを閉めるのである。

そして、ふたには鋭い鉄の錠前がついている。

箱に首を乗せた状態で、鉄のカギがついた重たいふたが、上から強い勢いをともなって首元に振り下ろされる場面を想像してみよう。

男の子の首は一瞬にして切断されるわけである。

リンゴの間に首がゴトッと落ちるシーンを思い浮かべてみていただきたい。

完全にホラーでしかない。

小さな子供をいじめにいじめ抜いたあげく、最後は首を切り落とす。

残酷極まりない。

首を切ったことの隠ぺい方法が怖い

さらに怖いのが、自分が行ったことの隠ぺい方法だ。

男の子の息が絶え、怖くなったまま母は(怖くなるくらいなら、いったいどんなつもりでふたを下したのか。冗談ではすまされないレベルだ)、男の子の首と胴体を布で固定し、椅子に座らせ、手にリンゴを持たせる。

何も知らないまま母の娘は「リンゴをちょうだい」、とお兄ちゃんに話しかける。

が、もちろん返事をしない。不思議に思った女の子がまま母に言うと、まま母はこう言う。

「もう一度、行っておいで」

「それで、もしも返事をしなかったら、首のうしろを一発たたいておしまい」

女の子がもう一度話しかけても、もちろん男の子は返事をしない。

言われた通りに首の後ろをパーンとたたくと、首がポロリ。

どう考えても、怖すぎる。

「お兄ちゃんの頭をたたき落としちゃった」と泣きわめく娘に、まま母はこう言う。

「だれにもさとられないようにだまっているんだよ。これはどうにもしかたないことだもの。煮こみ料理にしよう」

しかたがないことだからといって、どうして煮こみ料理になるのか。

恐怖とショックで泣き叫ぶ娘に「お兄ちゃんを煮こみ料理にしよう」と持ちかける母親。

いろんな意味で逆にすごい。

こうして、まま母は自分の娘に濡れ衣を着せる。

本当に娘を愛しているのだろうか。

さらにこのあと、何も知らない父親は煮こみ料理になった息子をガツガツ食べる。

重ねていうが、完全にホラーでしかない。

やっぱりハリウッドで実写化したら、『ハンニバル』を凌駕する問題作となりそうだ。

計画的な鳥の復讐が怖い

さて、ここまではまま母のいじめによるホラーの世界。

ここからは、ネズの木の力を借りた復讐がじわじわ怖い。

女の子は、嘆き悲しみながら、お兄ちゃんの骨を集めて、ネズの木の下に置く。

すると木はまるで喜んでいるかのように動き出し、霧が出て、火がもえだし、その中から一羽の鳥が飛びだす。その鳥は美しい声でこう歌う。

「ぼくのかあさん、ぼくをつぶし、
ぼくの父さん、ぼくを食べた。
ぼくの妹、マルレーネちゃん、
ぼくの骨をすっかり探し、
それを絹の布につつんで、
置いてくれた、ネズの木の下へ。
キィーヴィット、キィーヴィット、
ぼくはなんときれいな鳥なんだろう!」

(引用元:『グリム童話全集 子どもと家庭のむかし話』 訳 橋本 孝・天沼春樹)

まるで鳥は男の子の生まれ変わりのよう。

鳥が飛びさると同時に、男の子の骨は消えてしまう。

ちなみに「キィーヴィット」というのはデンマーク語で鳥の鳴き声を表す擬音、らしい。

この鳥は姿も歌声も美しく、様々なところで同じ歌を歌いながら、金の首飾り、赤い靴、そして石臼を手に入れる。

全く一貫性のないこれらのアイテムを鳥が何のために集めているのか。

ここからが復讐劇である。

鳥はネズの木にとまって例の歌を歌いだす。

お父さんがその鳥を見ようと外に出ていくと、上から金の首飾りが落ちてくる。

女の子が外に出ていくと、赤い靴が落ちてくる。

最後に、まま母が外に出ていくと、石臼がドスン!と頭の上に落ち、まま母は押しつぶされて消えてしまう。

この石臼、粉ひき職人20人がテコを使って起こすほどの重さ。

そんなのが頭の上に落ちてきたら、まず助からない。

100パーセント確実にまま母をしとめるために、鳥は緻密な計画を練っていたのだ。

勧善懲悪といえばそうだが、なかなかド派手な復讐劇である。

まとめ

いかがだっただろうか。

今回は香り豊かなネズの木が登場する、恐怖の物語を紹介した。

まま母の常軌を逸した壮絶ないじめは、なかなかに残酷さを極めている。

男の子の首がポロリと、一度ならず、二度までも転がり落ちるシーンは、想像しただけでホラーそのものだ。

そして、ネズの木が出した鳥による計画的な復讐劇も、ホラー臭をより駆り立てるのに一役買っている。

想像力豊かな読者のみなさんは、この話の映像を思い浮かべるとけっこう背筋がぞくぞくするのではないだろうか。

なにかと怖いグリム童話である。

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