グリム童話「七羽のからす」は兄想いの妹が指を切り落とす話

今回は、兄想いの妹が兄たちを救おうと奮闘する物語、KHM025『七羽のからす』をご紹介しよう。

 

グリム童話の中には、仲のいい兄弟姉妹が登場する話がいくつかある。

『ヘンゼルとグレーテル』では幼い兄妹が協力して、魔女から逃げ出すし、『ねずの木の話』では妹がお兄ちゃんの骨を集めて、兄を生き返らせる。

 

グリム童話自体が兄弟によって編纂されたのだから(⇒グリム兄弟の生涯)、兄弟の絆というものが、童話の中だけではなく、編集の過程においても大切なものであるということがよくわかるだろう。

そんな兄弟の絆からこの世に生みだされたグリム童話の中でも、今回の話はその絆が “身に染みて” よくわかる話だ。

 

失言が呪いに

『七羽のからす』では、7羽のカラスになってしまった7人の兄たちを救うために、女の子が世界の果てまで旅をする。

しかし、この物語、そんな健気なテーマなわりに、なぜかダークな香りがするのだ。

 

まず、兄たちがカラスになってしまったきっかけがすごい。

たわいもなさすぎて悪意すら感じる。

というのも、父親が口にした一言が現実になってしまうのだ。

 

7人の男の子がいる家に、待望の女の子が産まれる。

7人の男の子たちは父親の命令で、洗礼の水を汲みに井戸へ行く。

しかし、水をくもうとして水さしを井戸に落としてしまったため、困った男の子たちは家に帰ることができない。

息子たちがなかなか帰ってことに、腹がたった父親は、「わんぱくども、みんな、カラスになるがいい」と、どなった。

すると、兄たちは本当にカラスになってしまう。

 

息子たちを失って、父親も母親も悲しむが、いまさらどうすることもできない。

父親のうっかり発言が呪いに。こんなに簡単に呪われてしまうなんて。恐ろしい。

まさに口は災いの元。気をつけよう。

 

太陽と月と星たちが怖い

さて、女の子は自分に兄がいることを知らないまま、すくすくと成長した。

しかしある日、「なるほどあの女の子は、きれいだけど、7人の兄さんたちを不幸にしたのは、やはりあの子のせいだからな」と人が話しているのを聞いてしまう。

 

自分のせいでお兄さんたちがカラスになってしまった。

両親から話を聞いた女の子は、どんなことがあっても兄さんたちを見つけて救おうと決め、家を出る。

 

家を出た女の子は、ずっと歩き続けて、世界の果てにあるお日さまの元にたどり着いた。

しかし、この太陽、相当怖い。

なんと、小さい子どもたちをむしゃむしゃ食べていたのだ。

 

普通、お日さまってもっと温かい存在じゃないのか。

子どもを食べる太陽なんて、空に昇ってほしくない。

 

もちろん女の子は怖くなり、走って逃げた。

そして、今度はのところへ。

 

しかし、お月さまはとても冷たく、ぞっとするほど意地悪だった。

子どもに気がつくと、月は「におうぞ、人間の肉のにおいがするぞ」と言う。

人間の肉のにおい。

この物語では月も人間の肉を食べるのだろう。

 

明るいはずの太陽も月が、なぜかとってもダークだ。

 

逃げた女の子が、最後にお星様の元へ行くと、お星様は優しくて親切だった。

星は、女の子にヒヨコの足を渡して、

「この小さな足をもっていないと、ガラスの山を開くことができないよ。ガラスの山に、おまえの兄さんたちがいるからね」

と教えてくれる。

 

兄さんたちの居場所まで教えてくれるなんて、星たちはなんて優しいんだろう。

でも、ちょっと待って、お星さま。

ヒヨコの足って!

 

使い道が全くわからないうえに、どこでどうやって手に入れて、今までどのように保存していたのだ。

何かと怖い童話だ。

 

そして、指を切る

しかし、女の子は何一つ不思議に思うことなく、星たちからもらったヒヨコの足を小さい布に大事にくるんで、ガラスの山へ向かった。

ようやく山にたどり着くと、門はしまっていた。

ここで例のヒヨコ足が役に立つのか?

 

女の子が布を広げてみると、なんと中身はからっぽ。

女の子は、お星様からの贈り物をなくしてしまったらしい。

 

すると彼女はナイフを取り出して、なんと自分の小さい指を切り取った。

 

グロい。

いや、すごい。

でも、やっぱりグロテスク。

 

しかも、そのまま女の子はその切り取った指を門に差し込んで、門を開ける。

想像しただけで、目を覆いたくなるような光景だ。

 

小さい子どもが、自分で指を詰めてまで、兄たちを救おうとする。

とっても優しくて心温まる話……な、はずだ。

しかし、なんだかグロくて怖い。

グロくて怖いグリム童話だ。

 

ハッピーエンド

いろいろ気になることが多いものの、物語は一応ハッピーに幕を閉じる。

女の子が(きっと指から血を滴らせながら)ガラスの山の中に入ると、こびとがやってきて、7羽のカラスになった兄たちは留守だという。

彼らがいないうちに女の子は、兄たちのために用意された料理と杯の中身を少しずつ食べたり、少しずつ飲んだりする。

 

そして、お最後の杯の中に思い出の指輪を入れて隠れていると、カラスたちが帰ってくる。

食事をし終わって、指輪に気がついた兄たちが

「ああ、神さま、お願いです。ここにぼくたちの妹がいてくれれば、そうすれば、ぼくたちは救われるのに」

と言うのを聞いて、女の子が姿を現すと、兄たちは人間の姿に戻ることができた。

 

そして、みんなで仲良くおうちに帰る。

物語の途中はなんだかグロいけど、とにかくめでたく幸せになりましたとさ。

 

まとめ

いかがだっただろうか。

なにかと怖いグリム童話。

ハッピーエンドで終わってもなんだか怖い話もある。

 

今回は仲のいい兄妹が出てくる話の中でも、世界の果てまで旅をして、指を切り落としてまでも、兄たちを救おうとする妹の話を紹介した。

最後は家族みんなが幸せになるのだが、あの怖い太陽と月は何だったんだろう。

どうして鍵がヒヨコの足だったのだろう。

と何かとグロテスクなところが気になる物語『七羽のからす』

 

この他にも、なんだか怖いグリム童話を紹介していくつもりなので、楽しみにしていてほしい。

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